●ハラリ氏の新著書『Nexus』に思う
ユヴァル・ノア・ハラリ氏はこれまで、彼の著作の核をなす3著書『サピエンス全史(過去)』『ホモ・デウス(未来)』『21 Lessons(近未来)』を刊行し、全てが全世界でベストセラーになっています。発売間もない新著書『Nexus』では、「情報」を軸にして再び人類史を大胆に読み解くことに挑んでいます。上下巻あり、上巻は“人間のネットワーク”を下巻は“AI革命”をテーマに書き下ろしたとのこと。
私は新著書にも興味を持ち、いま関連情報を少し調べ始めています。
先日の日経新聞2面に『歴史学者・哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏からの直言「AIを民主主義の味方に」』の記事が掲載されました。少し前にANNで放映されたハラリ氏へのインタビューを観た時にも、同じような話をしていました
当記事の中では “時代に逆行するトランプ大統領の出現”と“AI革命アンコントロール”により、どんな社会に向かうか「人類は大きな岐路に立っている」と述べています。
トランプのような存在は、(帝国主義やナチズムなど)歴史上何度も存在してきました。トランプが有する世界観は、古くから歴史上にあります。
それは『弱肉強食こそが世界の秩序であり、強者の要求を拒んで争いになれば、拒んだ弱者の責任である。』という基本的な考え方です。
このまま進むと、間違いなく人と人の間にある信頼が失われ、国内・国家間の秩序も崩壊します。 
時代は“自由貿易や多様性などの普遍的価値、国際秩序”の方向に動いているのに対して、トランプはそれを攻撃・破壊しているだけで、今後の新たな指針は一切示していません。その先にあるのは「各国が自国中心主義に走り、自国を守るために軍備増強し、国家間の対立が激化していき、戦争に突き進む」ことになり、我々が望む方向に向かわないことが危惧されます。
それ以上に恐るべき存在としてあげたのが“AI革命”で、今までの技術革命とは次元の異なるテクノロジーです。すでにメディアにおいては人間からAIに権力が移行中にあり、最も力のある編集者はSNSのニュースを管理するAIのアルゴリズムです。そしてイーロン・マスクは行政官や官僚を攻撃し、官僚制反対を訴えながら“AIなどデジタル官僚制”に権限を与えています。
AI技術は「民主主義への脅威」「監視社会の出現」への課題を内在しています。政治家が大衆に直接アピールできるようになると、事実性よりも感情に訴えるメッセージのほうが拡散しやすくなり、その結果、複雑な現実から目を背ける“単純な解決策”や“陰謀論”が力を得ることになりました。
民主主義とは大勢が話し合い、意見をぶつけ合って皆で決めて国家が動きます。
一方で独裁とは一人の人間による命令で、国家が動きます。しかし今はそういう社会環境の中で、AIが人間の会話を管理し始めています。
偽物人間(AI)に法的規制が必要です。そして情報分断(エコーチェンバー)で制御&分断化する社会にならないために、国内・国家間の信頼関係構築が必要不可欠です。
本当に大切なのは「自己修正メカニズム」と「信頼の醸成」により民主主義を守ることではないかと思います。
情報は真実ではありません。虚構であっても共有・共感されれば、それは現実を変えうる力になります。情報とは人々を繋ぐネットワークを築くための基盤です。そして情報を支配するものが権力を握ることになり、「情報を独占すること=社会を支配すること」になります。
民主主義は「情報が自由にやり取りされる場」を前提とした理想であり、SNS時代には「誤情報の拡散」「ポピュリズム政治の横行」「真実を軽視する風潮」がみられます。
人類は虚構を共有することで大集団をまとめる(神話的ネットワーク)一方で、それを効率的に運営するために官僚制(官僚的ネットワーク)を発達させてきました。






最近の日本で起こっている様々な社会・政治問題をみていると、上記と同様な傾向が見受けられ、信頼社会が壊れて不信社会に向かっているのではないかと感じます。
将来の日本は信頼社会の再構築に向かって、動いていってほしいものです。