■「サピエンス全史」の著者が警告するAIと情報の未来 |
生成AIの急激な変化&活用の広がりは、目を見張るものがあります。 NHKニュースウェブ(2024.8.27)より、NHK国際部デスク・豊永博隆氏の気になる投稿記事の「イスラエルの歴史学者ヴァル・ノア・ハラリ氏が語ったこと」を紹介します。 「我々は神の能力だと伝統的に考えられてきた力を入手する過程にある」 世界的なベストセラーとなった「サピエンス全史」の著者ハラリ氏は6年前、2018年に行った私とのインタビューでこう語った。AI=人工知能がもたらす脅威について、まるで予言するかのような指摘をした。 また今年9月にはAIを含む情報の過去と未来、情報と真実、情報と権力の複雑な関係を読み解く本を出すとのこと。 本のメッセージを大胆に予測しつつ、進化するテクノロジーとの向き合い方を探る。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240827/k10014559741000.html |
「サピエンス全史」は「人類種のなかでなぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのか」など人類の歴史を独自の視点でひもといた書です。繰り返し行われる紛争や戦闘を身近に感じ、なぜ人類は戦争を繰り返すのかと大きな『矛盾』を感じたハラリ氏。 その答えを探ろうと軍事史の研究を続け、それを学生に分かりやすく教えようと考えを重ねてまとめあげたのが「サピエンス全史」だった。 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教と3つの宗教の聖地があるとされる場所。異なる宗教が交差し、衝突や矛盾が毎日の暮らしに存在する場所だからこそ、ハラリ氏の深遠な考えが醸成されるのだな、と現地に行き納得した。 |
AIが進化していくとどうなるのか? ⇒多くの人が“無用者階級”になる? こうした状況を先回りして予言していたのが歴史学者ハラリ氏。インタビューは「ホモデウス」を発刊した2018年にイスラエルのテルアビブで行った。このときハラリ氏は次のようにコンピューターやAIの進化に警鐘を鳴らしていた。 ハラリ氏「コンピューターが意識を発達させて問題解決をはかるとは想像できません。最も恐ろしいシナリオは意識や感情を全く持たない超越的な知的な存在によって世界が支配されることです」 この本のタイトル、「ホモ・デウス」はラテン語の組み合わせです。ホモは人類、デウスは神という意味だとのこと。ハラリ氏「AIを使えばコンピュータによって多くの作業が行われるため、人間は労働市場から追い出され、多くの人が経済的価値や政治力を失い、“無用者階級”となります。バイオテクノロジーによって、経済的でなく、はじめて生物学的な不平等が生まれるのです」。 |
ハラリ氏「私はこのタイトルを比喩ではなく、文字どおりの意味で使っています。実際われわれは神の能力だと伝統的に考えられてきた力を入手する過程にあります。聖書や世界中の多くの神話にあるように神々は動物や植物などを望みどおりに創造しました。現在、われわれはバイオテクノロジーとAIの助けによって生命を設計し、製造する方法を学んでいるのです」 ハラリ氏が本のなかでも、そしてインタビューでも強調していたのが「知能と意識の分離」という難しいテーマだ。ハラリ氏は知能とは「問題を解決する能力」、意識とは「物事を感じ取る力=感情」だと説明している テクノロジーは人間らしさを次第に軽視していくのではないかと警鐘を鳴らしている。 ※日本では2015年に「サピエンス全史」(過去のこと)、2021年に「21Lessons」(近未来のこと)、そして2022年に「ホモ・デウス」(未来のこと)と出版してきている。 |
AIとどう向き合えばいいのか? 2024年9月10日に英語版刊行、日本語版は来春刊行される書籍に書いてある。 新刊書のタイトル「Nexus」の英語の意味は「つながり、むすびつき」という意味です。 石器時代から、近世の魔女狩り、ナチズム、そして今日のポピュリズムの台頭まで、歴史的な視点から「情報」をとりあげ、情報と真実、情報と官僚制や神話、権力との複雑な関係を読み解くという。 ハラリ氏「今やわれわれはハッキングされる動物です。アマゾンやグーグル、中国政府やアメリカ政府はハッキングに必要な膨大なバイオテクノロジーとコンピューターの知識を蓄積しています。自分自身をよりよく知る努力をしなければ、彼らがあなたの選択を予測するだけでなく、欲望も操作されてしまうのです。一番重要なことは自分自身を知ることだと思います。自分が何者であるのかを理解することです。あなたの心はどんな声を発していますか。あなた以外にあなたのことを理解できる人は誰もいません。他の誰もあなたの頭の中をのぞいて見ることはできないのです」 AIはこれまでとは根本的に違う、革新的な技術であるがゆえに、使い方を注意しないと、うみだされる情報の渦に飲み込まれてしまいかねないと感じています。それを防ぐためには、自分が何をやりたいのかをよく知り、人が主となって技術を使うことが大事なのだと感じています。 |
いずれにしても、「道具に使われるのではなく、道具を使いこなす」ことが大切です。 |