■南海トラフ地震について
最近、日本だけでなく世界的に大地震が頻発しているようです。今年になってM7以上の地震だけでも、ニューギニア付近(10/7)、インドネシア付近(8/29)、アリューシャン列島(7/16)、南太平洋フィジー(6/16)、南太平洋ロイヤリティ(5/19・20)、南太平洋トンガ(5/11)など20数回も発生しています。
日本でも近年M 6以上地震は、能登(2023.5/5)、福島県沖(2022.3/16)、福島県沖(2021.2/13)、山形県沖(2019.6/18)、胆振地方(2018.9/6)、阿蘇地方・熊本大地震(2016.4/14・16)などが発生しており、M 9の三陸沖地震:東日本大震災(2011.3/11)、M 7の阪神淡路大震災(1995.1/17)などが私には強く印象に残っています。
気象庁予想では、大規模な南海トラフ地震の発生は、30年以内に起きる確率が70~80%(20年以内:60%、40年以内:90%)と予測されて注意を促しています。トラフとは「細長い海底盆地(深さ6000m以内)」で、それより深いものは海溝というそうです。
政府の試算によれば、東日本大震災の10倍以上の被害をもたらすとされる南海トラフ地震。しかしそこには発生する可能性が極めて高い「原発事故」による被害は想定されていないとのこと。
日本列島は、北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートという4つのプレートが干渉し合う「プレート銀座」の上にあります。日本列島自体は、東日本が北米プレート、西日本がユーラシアプレート、伊豆半島がフィリピン海プレートの上に乗っているとのこと。このように日本列島の大部分が乗っている陸のプレートである北米プレートとユーラシアプレートに対して、海のプレートである太平洋プレートとフィリピン海プレートが、1年に数センチずつ移動してグイグイと押しつつ、陸のプレートの下へと潜り込み続けています。
南海トラフとは、駿河トラフに続いて遠州灘の沖合から日向灘の沖合に延びる細長い窪地。その北側の斜面には幾段もの急崖が並び,底は堆積物で埋め立てられて平坦。このトラフに沿ってフィリピン海プレートが西南日本の下に沈み込むので,古来,巨大地震が繰り返し発生するそうです。
       今まで把握できている「歴代の南海トラフ地震」は以下の通り。
* 684年  白鳳地震(M8.25)
* 887年  仁和地震(M8.25)
*1096年 永長地震(M8.0~8.5)
*1099年 康和地震(M8.0~8.3)
*1361年 正平東海地震
正平南海地震(M8.25~8.5)
*1498年 明応東海地震(M8.2~8.4)
*1605年 慶長地震(M7.9)
*1707年 宝永地震(M8.6~9.3)
*1854年 安政東海地震、安政南海地震(M8.4)
*1944年 昭和東南海地震(M7.9)
*1946年 昭和南海地震(M8.0)
被害想定は、南海トラフの想定震源域が一気にズレ動いた場合を前提としています。このケースは「全割れ」とも呼ばれています(※地震学の関係者の間では地震が起きることを「割れる」と表現することがあります)。一方で、国や専門家が強い警戒を呼びかけるもう1つのケースが「半割れ」です。熊本大地震も「半割れ」で2度の大きな地震となっています。
この「半割れ」は、歴史的にも繰り返し起きています。江戸時代の1854年には「安政東海地震」と「安政南海地震」が32時間差で、そして平安時代の1096年には「永長地震」と1099年の「康和地震」は3年の時間差、また昭和前半には1944年の「昭和東南海地震」と1946年の「昭和南海地震」が2年の時間差で発生しています。

最後に名大・福和伸夫名誉教授の「日本と地震」に関するコメントを紹介します。
日本は歴史上、把握できているだけでも9回の南海トラフ地震を経験していますが、先人たちは毎回、それを乗り越えてきました。つまり、南海トラフ巨大地震としっかりと向き合えば、私たちは次の災害も乗り越え、よりよい時代を作ることができるということです。来ることが分かっている地震なので、恐れおののくだけでなく、前向きに乗り越えていけるような形に社会が変わっていく必要があります。私たちひとりひとりが地震に対してしっかり備え、被害を減らしていくという気持ちを持ち続けたいと思います。