■台湾日本語世代からの遺言③
台湾日本語世代のアンケート調査結果から感じたことを書いてみたいと思います。
アンケート調査は15項目ありましたが、簡略化して記載しておきます。
(有効回答者数 110名、平均年齢76歳、男性87人/女性23人)
① 終戦時年齢 :10歳未満/4人、10~14/36人15~19/45人、20以上/25人
② 日本語能力 :読み書き会話OK /93人、多少不便/10人、会話OK/7人
③ 配偶者の日本語能力 :同等理解/61人、多少理解/44人、理解不可/5人
④ 子供の日本語能力 :同等理解/7人、多少理解/52人、理解不可/56人
⑤ 日本時代に教わった最も大切な価値観 :
   愛国、正直、孝行、勤勉、時間厳守、整理整頓、犠牲的精神
⑥ 現在も身に染み付いている価値観
   正直、勤勉、時間厳守、孝行、教育勅語
⑦ 子供教育に活かしたか :はい/84人、いいえ/7人、わからない/19人
⑧ 子に日本精神は伝わったか :はい/44人、いいえ/22人、わからない/44人
⑨ 戦後社会で日本時代の価値観に矛盾を感じた :感じた/60人、感じない/44人
⑩ 矛盾を感じた内容は :正直さが失われた、汚職賄賂の世界になった、外省人との差別待遇
  日本精神の欠落、教育が変わった
⑪ 家族友人に2・28事件や白色テロの犠牲者は :いる/57人、いない/44人
⑫ 今までの人生で一番苦労したこと :戦争体験や空襲、国民党の悪政、価値観の相違、白色テロ
  病気、貧困、北京語習得、子供の教育子育て
⑬ 今までの人生で最も愛着を覚える時代 :日本統治時代、幼年期、小学校時代
⑭ 次世代に伝えたいこと :日本精神の伝承、台湾精神、心の問題、世界平和
⑮ 日本や日本人に言っておきたいこと :台湾への理解、日本文化と武士道、修身の復活
  毅然とした外交姿勢、世界平和
終戦時の年齢が多感な若者集団(20歳未満の人たちが8割以上)であり、全員が生まれたときから日本精神文化や日本語教育を受けてきて、価値観も含めてまさに日本人だったことを思うと、国民党支配に変わったときのカルチャーギャップの激しさは、いかほどだったか計り知れません。
加えて、当時の国民党の悪政(汚職・賄賂の横行、台湾人差別・略奪など)による2・28事件(現地人暴動)の発生、その後の長期に渡る白色テロ時代を考えると、日本時代の倫理道徳の行き届いた日本時代との違いも際立ち、「日本時代はよかった」と思う台湾人が大多数だったことも当たり前だったのかもしれません。
その延長線上に、現在の台湾人の親日感の強さがあるわけですが、世代交代が進むに従い、日本人感もだいぶ変わりつつあるような気もします。
国家間の絆を妨げる関係をつくってきたのは日本の方ではないかと感じます。
置き換えて考えると、「日本人を骨抜きにするGHQ政策を受け入れて、親米感情の高い国民性を持った日本」と、「日本の戦後台湾政策(米国追従)を横目で見ながらも、親日感情の高い国民性を維持してきた台湾」は、「過去の悪夢を水に流す」という国民性からして似通っているのかもしれません。
今年の8月は、台湾の近代史に接する機会が多くあり、だいぶ詳しくなりました。
日経新聞「私の履歴書」(8月1ヶ月連載)に採り上げられたのが、エビ養殖の世界的権威・廖一久(リャオ・イーチュウ)台湾海洋大学終身特別教授であり、まさに台湾日本語世代の人であり、記載内容が戦後近代史そのものであり、大切な補完資料ともなりました。不思議なご縁を感じています。
昔台湾に出向して5年間住んで、「台湾を第2の故郷」と位置づけていましたが、今は親台湾感が更に増した感があります。
次回は同時代に「台湾で生まれて、台湾で育った日本人(実際の日本を知らない日本人)」である「湾生」に関して、書いてみたいと思います。