■野中郁次郎の「SECIモデル」が進化中
日経ビジネス最新号(2023.01.02)の第2特集「世界の英知をフル活用せよ」の書籍紹介に「世界標準の経営理論」(入山章栄著)があり、フッと解説文が目に留まりました。経営学者が発展させてきた「経営理論」のうち「世界標準」といえるものを約30選び紹介してあるとのこと。
その中に、私が強く共感する野中郁次郎先生の「SECIモデル」も入っているはずと調べたところ、やはり「世界唯一の知の創造の理論」として記載されていました。
経営学の世界的潮流としても、アメリカ最大の経営者団体「ビジネスラウンドテーブル」で、株主の利益を最優先する「株主資本主義」から、社員や顧客、地域社会などすべての利害関係者の利益を考える「ステークホルダー資本主義」への移行が宣言されるなど、数字や目先の利益を追うよりも、人間性を大切にする傾向が顕著になりつつあります。

野中先生も、最近の講演では「SECIモデル」思想を基軸に置いた「ヒューマナイジング・ストラテジー(人間くさい戦略)」をテーマにされているケースが多いようです。
だいぶ前の日経ビジネスに、世界の最新経営論(野中郁次郎の「人間的」経営論)が連載され、気になって保管していましたが、「ヒューマング・ストラテジー(人間くさい戦略)」の話だと分かりました。
私が描いたイメージは、野中先生は東洋哲学をベースに置いた経営論であり、経営学としては異質だったようです。最近SECIモデルが再度、脚光を浴びているようで、西洋哲学をベースに置いた欧米の経営学者との相互融合が図られつつあることを感じました。
いろんな分野で、間違いなく「綜合化(東洋哲学と西洋哲学、アナログとデジタルの融合)」が始まっており、それも西洋主導から東洋主導にシフトしていく気がします。

SECIモデルの進化系「ヒューマナイジング・ストラテジー(人間くさい戦略)」に対する理解度を深めるために、保管資料を改めて読み返していく必要性を感じています。
共感からまず始まり、対話や共体験を通じて、物事の本質を徹底的に突き詰め、デジタルもアナログも総動員して理論や物語をつくり出す。こうして得られた組織的な知識を実践の中で活用し、自己変革へとつなげていく。これを繰り返していくことが、SECIモデルの核心といえるようです。
 知識(knowledge)を知恵(Wisdom)に変えていくためには、実践知(Practical Wisdom)が必要となり、こうした知識創造プロセスを組織的に押し進めていくのが「実践知リーダーシップ」即ち「ヒューマナイジング・ストラテジー(人間くさい戦略)」にほかなりません。

福岡伸一氏が西田哲学と出会ったことや、立石一真の未来予測「SINIC理論」で現在「破壊と創造の20年(最適化社会)」にあり、今後は自律社会を経て新社会OSの自然社会に移行することも底通するものを感じます。「東洋思想と西洋思想の融合」が顕在化していくことは今の時代の必然であり、近未来予測も更に楽しくなりました。