■「ロシアのウクライナ侵略戦争」考⑤

現代の地政学について
2月24日以来、ニュースを見るたびに「ロシアのウクライナ侵攻(侵略戦争)」の話ばかりで、何ともいえない気持ちになりスッキリしない。国際ルール完全無視の横行に理不尽さや無力感を感じるが、今回の戦争は「仁義なき戦い」であることを、生々しい現実として見せつけられる時代である。見なければいいのだが、長年ニュース番組を見る癖がついており、嫌でもついつい見てしまうことになる。
そういうタイミングで本屋に寄ったら新刊書「超地政学で読み解く!激動の世界情勢」(宝島社)があり、題名につられて買ってみることにした。
というのは地政学の本を何冊か持っているのだが、昔の時代の事例に基づき書かれており、ロシア・ウクライナ戦争で目覚ましい進化を遂げている「サイバー戦」「宇宙戦」「プロパガンダ戦」などについて、殆ど記載がされてない。
地政学には詳しくないのだが、デジタル革命後の「超地政学」について、知っておく必要性を感じた次第である。

地政学は20世紀初頭にチェーレン(スウェーデン)が提唱した「国際政治を考察するにあたって、その地理的条件を重視する」学問である。地政学者ハウスホーファー(ドイツ)の思想概念「生存圏」を、ヒトラーが政治戦略として活用したとも言われており、暫くは国際政治学ではタブー視されてきた学問である。
地政学理論ではマハン(米国)の「シーパワー理論」や、マッキンダー(英国)の「ハートランド理論」などが有名である。この二つの概要について触れておく。

「シーパワー理論」とは、歴史上、海洋を制した国が覇権を握ってきた。それ故、米国も海軍を増強して海洋に進出すべきであるという理論を展開した。その後にパナマ運河の建設やハワイ、フィリッピンの併合などを提唱した。
「ハートランド理論」とは、英国陣営を海洋覇権「シーパワー」、ロシア陣営を陸上覇権「ランドパワー」に分類し、ユーラシア大陸の中心部を「ハートランド」と名付けた。ロシア軍が攻め込まないように東欧に緩衝地帯をつくることを提唱した。

その後の地政学は「政治的発展や膨張を合理化する国家戦略論」になり「地理的な環境が、国家に与える国際政治的・軍事的・経済的な影響を、巨視的な視点で研究する」学問に進化していき、今回のロシアによるウクライナ侵攻(侵略戦争)により、新たに脚光を浴びるようになった。
各国の外交戦略は「地政学」で動く。正義感・倫理観は建前論で、本音は人権・民主主義ではなく損得で動くのが事実である。
加えて近年は「デジタル技術の劇的進化」「世界的コロナ禍の長期的蔓延」「異常気象による温暖化・干ばつや豪雨」という社会が激変する要素が重なったこともあり、人間社会の全ての面において「激変の時代」を迎えていることを実感している。

今回のロシア・プーチンの行動を見ていると、同じ専制主義国家・中国の台頭に合わせて、西欧諸国の「米国の政治・経済・軍事力の低下」「民主主主義国家の行き詰まり」などによる国際政治のパワーバランスが完全に崩れており、「西欧諸国の衰退」に合わせて「栄光のスラブ国家の再構築」を図る絶好のチャンスと捉えていると想像できる。近況を客観的にみていると、プーチンが「打倒ナチス」と叫びながら、ヒトラーと同じ過ちを繰り返しているように思えてしまう。
この企てが成功した場合は、間違いなく中国も台湾進攻、尖閣諸島侵攻、そして沖縄侵攻とエスカレートしていく可能性があり、ウクライナ侵攻の失敗、結果的にプーチン失脚に進展することが望まれる。