■「ロシアのウクライナ侵略戦争」考④
今回の侵略戦争が2月24日に始まって、すでに7週間経っており、どうも長期戦の様相を呈している。ロシアのミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナの攻撃で沈没するなどの話がある一方で、要所マリウポリが陥落直前にある中でも、ウクライナ軍兵士はロシア軍の投降呼びかけに対して徹底抗戦を宣言している。
何故ならロシア軍の「投降した時の身の安全保障」が嘘であることを確信しているからである。裏では双方のプロパガンダや駆け引きが行われる中で、真偽の見極めがますます難しくなっているような気がする。
ついつい連日のニュースを見てしまうのだが、何ともいえない理不尽さや無力感を感じてしまう。なぜなのかを一生懸命考えてみたが、どうもうまく整理できないでいる。それでも何とか整理したい気持ちでスッキリしない精神状態にある。
プーチン大統領は「昔の属国ウクライナを、大国ロシアが自由に支配するのは当たり前のことである。言うことを聞かなければ、全員抹殺してでも自国領土にしてしまうぞ。」という考え方のように感じる。「力こそ正義」であり、徹底的に市街地を破壊し大量虐殺することで、相手を屈服させる作戦をとっている。
一方、ゼレンスキー大統領は、「独立国で民主主義国家であるウクライナは、自立自尊の精神で国家を運営するのは当たり前であり、国際法に違反して世界秩序まで揺るがし、国境侵略することは許すことのできない暴挙である。おまけにウクライナの市街地を徹底破壊し、国民を集団虐殺(ジェノサイド)しているのは重大な戦争犯罪である。」と当たり前のことを言っている気がする。
私が甘いのかもしれないが原点に戻ると、
※「国際法を遵守する」のが国連加盟国の義務だとした場合に、ロシアが「勝手にウクライナ侵略を始め、勝手に多くのウクライナ市街地を破壊して、勝手に無差別の大量虐殺をやっている」のが事実ではないか。
※一方的にロシアによる侵略行為が起こっているのに、侵略戦争の阻止ができない国際連合は機能していないことになる。本来であれば常任理事国・五カ国は、(地球的視野に基づき)大所高所から参加国をリードする役割であるが、現実的には自国の利害得失で動く特権化していることが問題である。
この事実に関して、私は心の底では「正義は勝つ」「嘘は信用をなくす」(人間の倫理道徳観は大切なもの)と思っているのに、「もしこのままロシアの要求が罷り通るようなことがあったら」「もしプーチン政権が維持したままで決着したら」今後の国際秩序は完全に破壊されてしまうことになる。要は、グローバル化した社会の中で、自国中心主義による「仁義なき戦い」が至るところで頻発することになる。
丹羽宇一郎氏が著書「人間の本性」の中で述べていることを転記しておく。
『人間は「動物の血」と「理性の血」の両方を持っています。人間は所詮動物です。飢え死にしそうになったら、人の命を奪ってでも食べものを得ようとする本能を持っています。私はそれを「動物の血」と呼んでいます。油断をすると人間の中に潜む「動物の血」が騒ぎ始めます。怒り、憎しみ、暴力的な衝動を内包する「動物の血」が流れていることを忘れてはなりません。
人類誕生以来、人間は「動物の血」をうまくコントロールすることができず、長きにわたって同じ過ちを繰り返しています。
21世紀に生きる人たちがこれらを自覚し、過去の人間と違って、心の成長を示すような賢い判断ができるようになることを願いたいと思います。』

次回に、地政学的観点から書いて区切りにしたいと思う。