■「ロシアのウクライナ侵略戦争」考③ |
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略戦争の推移が 連日、海外でも国内でもトップニュースで報じられている。 プーチンの身勝手な人道を無視した冷酷非道さ(強者が弱者に徹底的に恐怖感を植え付けるやり方)、町全体への無差別砲撃によるウクライナ国民の悲惨さなど、連日トップニュースとして目にするたびに、何とももどかしい気持ちになる。心のわだかまりが広がっていき、現実のこととして受け止めることが難しく欝々とした気持ちが溜まっていく感じである。 ソ連崩壊後の歴史や周辺状況を深く知ることによって、「事実」と「立場による見方」が違ってくることも強く感じている。プーチン論理についても「欧米に騙された怨念」のようなものが背景にあることも理解できたが、ウクライナという独立国家に侵略していることは、論外の暴挙であることは当たり前である。 |
第2次世界大戦からの反省の下、世界の平和や国際社会秩序を継続していくために、1945年10月に国際連合が設立された。その中の安全保障理事会の常任理事国は、米国、英国、仏国、ソ連(1991年ソ連崩壊でロシア連邦に変更)、中華民国(1971年から中華人民共和国に変更)の5カ国である。 その中核を担うべき常任理事国ロシアが、自国中心の論理のみで、国際秩序破壊を率先して行ったりしたことで、第2次世界大戦後の新たな秩序形成の枠組み・国際連合も完全に機能不全に陥っている。(常任理事国の拒否権行使で、以前から機能不全になっているが) 常任理事国は、世界リーダーとして倫理・道徳観に基づく振る舞いが望まれるが、米国、ロシア、中国など自国利益優先・自国中心主義傾向が徐々に高まっているのが現実である。 国際連合は抜本的に見直しを行わない限り、機能しない仕組みである。 |
今回の侵略戦争を機に「地政学」という言葉が多く使われるようになった。 私が「地政学」に関して興味を持ったのは、昨年春頃に出口治明著「教養としての地政学入門」を読んでからである。 地政学とは「政治的発展や膨張を合理化する国家戦略論」であり、ヒトラーが地政学を活用して侵略戦争を拡大し、第二次世界大戦に突入していった経緯があるとのこと。過去の反省を踏まえて、一時はタブー視された学問でもあるが、米国(トランプ)やロシア(プーチン)、中国(習近平)などは、地政学を国家戦略として活用しているようである。フェイクニュースも戦略ツールの一つなのかもしれない。 日本人は、本心から「嘘をつくのは悪」「ルールは守るのが当たり前」と思っている傾向が強く、それが国家間の信頼関係構築に繋がると考えているが、多くの国では「本音(損得)と建前(倫理・道徳)」を思った以上に使い分けていることを感じている。最近はだいぶ変わりつつあるが、根底にあるのは神道(和)や儒教(恕)の精神を重んじる性善説民族なのだと思う。 |
昨年春に共育塾プラスワンで話すために作った資料を見返すと、各国の外交戦略は「正義感・倫理観は建前論で、本音は人権・民主主義ではなく損得で動く」とは書いている。この頃は私も地政学を机上論的な理解しかしていなかったが、今回の侵略戦争をリアルタイムで見る(疑似体験する)ことにより、戦争実体の生々しさを実感した。 それに加えて日本もこのような戦争(対中国、対ロシア)に「いつ巻き込まれてもおかしくない」という切実な問題であることを強く認識し、今まで以上に当事者意識を強く持たざるを得なくなった。 |