■「ロシアのウクライナ侵略戦争」考②

前回の投稿から2週間経つが、残念ながらロシアの無茶な侵略戦争が続いている。ウクライナの悲惨な実情をリアルタイムで目の当たりにして思うことは、人道的にも許されることではなく、一刻も早くプーチンが失脚して、とりあえずロシア軍の全面撤退が実現してほしいものである。
今回の一連の報道推移を見ていて「大きな時代の変化」を感じたことがある。
現在進行形の侵略戦争が、リアルタイムで世界の至るところに(独裁政権の一部の国を除いて)、我々にも届く時代になっていることを実感している。まるで映画を見ているようで、現実に起こっていることに対して、悲惨さを強く感じることであるが、一方でまるで夢の中の出来事のように感じるたりもする。
非常にもどかしいのは、ロシアの一方的で理不尽なウクライナ攻撃に対して、「西側が軍事加担したら第3次世界大戦、即ち核戦争が始まり地球は終わるので、経済制裁でロシアに自重を求めるしかできない(第3次世界大戦防止は地球の最重要課題?)」「中国やインドはロシア側に理解を示しながら、明確にロシア擁護に回ると、その後の西側からの反発が前面的に起こり、非難が自国にも向けられるようになるので棄権に回る(矛盾を承知の曖昧路線?)」「西側諸国の対ロシアへの利害がバラバラで、思い切った経済制裁も難しい(民主主義国では人権や自由が侵されたら強い結束発揮?)」などと厳格な協調路線が取れないことである。
加えて、国際連合の常任理事国の実態がおかしくなって、仕組みが機能しなくなっている。拒否権という権利だけは擁護されて義務が果たせないでいるのを放置していることで、近年は機能不全に陥っている。ロシアが嘘を並べて重要会議を招集し自国のアリバイ作り(正当性主張)をしたり、自国に不利なことは拒否権を行使して議決できないようにしている。いつの間にか大国・核保有国の横暴が罷り通る仕組みになってしまっている。
国際連合そのものは、本当は「グローバリズムの中での民主主義を基軸に置いた制度」である。専制主義国家が経済力や軍事力が低かった時代は、民主主義大国の横暴はあったものの、民主主義国主導で機能していたが、専制主義国家の中国が経済的にも軍事的にも強くなったことで、国際連合のあり方が変わってしまった。裏には民主主義国家と専制主義国家の対立構造もあるが、そのことを表に出せないでいる面もある。
今回の反省を踏まえて「国際連合の仕組みの見直し」が行われないと、存在価値がなくなる。第1次世界大戦⇒国際連盟⇒第2次世界大戦⇒国際連合と推移してきたが、また同様の節目を迎えている。

次に情報戦は、現代戦争において「最も重要で基本的な戦法」であり「攻撃と防御の両方の作戦を含む、競争上の優位性を追求するための情報の使用と管理に関する戦略」と定義できるかもしれない。
今回の情報戦では、ロシアが偽情報を早い段階から仕掛けて、あとで効果を発揮させたり、相手方発信源を乗っ取って偽情報を自ら撒き散らせてきたが、その後はウクライナ側がアメリカやハッカー集団の助けを借りて情報反撃しており、ロシアの多用してきた偽情報作戦を表に晒して、早い段階でロシアを世界から孤立させるようになっている。ロシア軍の情報装備の陳腐化と弱点が顕在化し、ウクライナ軍の情報装備や活用の優位性が明確になっている。

つくづく感じるのは、現代戦は全領域戦(All-Domain Warfare)であることだ。全領域戦とは陸・海・空戦、サイバー戦、宇宙戦、電磁波戦、情報戦、外交戦、経済制裁などの経済戦、法律戦などを含むあらゆる手段を駆使した戦いである。
大国ロシアのやり方を見ていて感じるのは、人道上も許されない一般市民を巻き込んだ虐殺を広げることで、相手国や国民に恐怖心を徹底的に与えることで、精神的に屈服させようとする、専制国家の戦法である。それに対するウクライナ国と国民の屈しない精神的強靭さも感じている。まさに国際的「仁義なき戦い」そのものが目の前で展開されている。
今回の一連の報道から、ロシア及び周辺国の長い歴史を学んでいる側面もあるが、島国日本とは異なった国の形成やものの考え方、それに基づく精神構造の複雑性なども実感している。同時に、ロシアと中国の思考構造に類似性・共通性を感じざるを得ない。
前回の繰り返しになるが、
ロシアのウクライナ侵攻と同様に、中国の場合は台湾進攻だけでなく、沖縄(琉球)や尖閣諸島、南沙列島への侵攻、そして日本侵攻も視野に入ってくるような気がする。日本もうかうかしていたら大変なことになるので、対応体制づくりは喫緊の課題となっている気がする。