●2030年の世界②
2022年の世界十大リスクについても触れておく。
1位には、中国が新型コロナの感染封じ込めを目指す「ゼロコロナ政策」に失敗し、世界経済や各国の政情が不安定化する事態を挙げてある。
「先進国ではワクチン接種の推進などによってパンデミック(大流行)の終息が近付いている(経済的な豊かな国を中心にエンデミックを迎える)」とした一方、「ほとんどの国はより困難な時期を迎えることになる」と指摘。
「中国国内の消費の落ち込みやサプライチェーン(供給網)の混乱」といった影響は世界に波及し、経済不安やインフレの加速、格差拡大などに対する不満が、各地で政情不安を引き起こす恐れがあると警告した。これを「ノー・ゼロコロナ」と表現。
2位としたのは、国家や政府の力が及ばない「巨大IT企業の影響が強まる世界」のリスクだ。デジタル空間では一握りの巨大IT企業が主役となり、個人の思考にも影響を与えると指摘(巨大テック企業による支配は、個人データの取り扱いやプライバシーの問題だけでなく、地政学的にも大きなリスクとなる)。デジタル空間においては誤情報がさらに広がり、民主主義への信頼が損なわれると予測している。デジタル分野においても、米中の緊張が高まるだろうとの懸念を示した。
3位には11月に実施される「米中間選挙」を挙げ、トランプ前大統領の2024年米大統領選への出馬を左右するだけでなく、「歴史的な転換点となる」とした。民主党のバイデン大統領の支持率が低下する中、野党共和党が議会上下両院の多数派となる可能性があると分析。今やアメリカには自由で公正な国政選挙を行う能力がない。そして民主党と共和党のどちらが勝っても、「不正選挙だ」との批判合戦となり、混乱や暴動が起こる恐れがある。このような状況下で、米国主導の国際秩序回復などはあり得ないこととなる。もはや「G0の時代」となっている。
4位には「中国内政」を挙げた。今年後半の共産党大会で習近平総書記(国家主席)が異例の3期目政権に踏み出すことが確実視されており、習政権に対するチェック機能がほとんどないと指摘した。5位は「ロシア」で、ウクライナ情勢を巡るプーチン大統領の次の一手に注目し、米露関係は極めて危険な緊張状態にあるとした。6位には、核合意の立て直しを巡り、対外強硬姿勢を崩さない「イラン」を選んだ。7位には「脱炭素政策とエネルギー政策の衝突」、8位には「世界の力の空白地帯」、9位には「価値観の衝突に敗れる多国籍企業」、10位には「トルコ」を挙げてある。
いずれにしても米中や米露の軋轢をはじめ、平和を脅かすさまざまな出来事があまりにも多くあり、世界的な社会的不安や不信は高まるばかりである。
少しでも早く信用社会、信頼社会に近づいていくことを願っている。