●2030年の世界①
米国の国際政治学者・イアン・ブレマー氏率いる調査会社ユーラシア・グループは1月3日、2022年の「世界の10大リスク」を発表した。1位に「中国によるゼロ・コロナ政策の失敗」を挙げ、同国は新型コロナウイルスの完全な封じ込めに失敗して世界経済が混乱に陥る事態を予測。
2位に「巨大IT企業の強まる影響力」、3位に「米国の中間選挙」を挙げている。
これと関連するが、日経新聞(2022年2月4日)7面に「米主導秩序は二度と戻らず」の意面記事が掲載され、「10年後の世界の変化」に関して、イアン・ブレマー氏がインタビューに答えていることから触れる。
3年にわたるウィールスとの戦い、強まる一方の巨大テック企業の影響力、米中超大国の激しいせめぎ合い・・・。これらにより世界の力学が想像を超えたスピードと広がりで変化する。今までは米国主導で世界秩序が形成されていたが、世界秩序は米主導秩序には二度と戻らない。理由は米国の分断が著しく既に世界のリーダーが不在(G0)の時代に突入しているからである。(米国は強力な起業家精神と民間部門、個人主義に支えられた国で、本来であれば世界のリーダーであってほしいが、トランプが助長した国民間の分断が著しく、政治が機能しない状況が当分続くと想定できる)。
今からは、課題ごとに違ったタイプの参加者がルールを決める時代になる。(例えばサプライチェーンは中国、規格・基準作りは欧州など)
最も問題含みなのがテクノロジーの分野。ルールは巨大テック企業が決めるようになると、彼らのビジネスモデルが不平等を深め、市民や国家の個別の利益を頻繁に混乱させ、民主主義も確実に傷める。

米国の問題も大きいが、中国の問題のほうがさらに大きい。賃金格差や企業債務の問題、近い将来には人口問題にも直面する。これから目にするのは一段と深刻な不調和と不平等、そして気候変動がもっと大きな問題になる。
但し気候変動に対しては世界が団結しているので、対策が急がれることになり、新たな産業革命が短期間に起こるのではないか。
一番心配なのは人工知能(AI)の存在である。兵器に搭載したり、人事評価を委ねたりすることの問題もあるが、心配なのは「子供達の思考の過程がアルゴリズム(計算手順)によって支配されつつあることである。アルゴリズムで思考過程がつくられた人間集団は世界をもっと深刻な分断に導く。人間の情緒性やモラルを破壊してしまう可能性が高い。バイオテクノロジーにAIが関係してくると、違った種類の人間がつくられていくことが危惧される。
次回は「2022年・世界の10大リスク」について触れることにする。