●般若心経を深める③
前回コラムを踏まえて、私なりの「般若心経の全体解釈」をやってみたいと思います。
【表題&全体概要】 “仏が説いた智慧の修行に関する教え”
あらゆる存在(色)は、すべて実体がなく(空)、無常(全ては移ろうもの)であり無我(因縁生起)である。心と身体(五蘊:色受想行識)も実体がない(空)ということを体得するには、単なる知識として学ぶ(知識知)だけでは困難であり、六波羅蜜の教え(智慧の修行)を試行錯誤しながら実践体得することで、各人各様が悟りに達する可能性が生まれる。(実践知)
この般若心経は、みんなが「諸行無常・諸法無我」という真理を理解し「各人が悟りの智慧を実践体得するための極意」を書き記したものである。
          仏説摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是
舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 
是故空中 無色無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 
無眼界乃至無意識界 無無明亦無無明尽 乃至無老死亦無老死尽 
無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 
菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 
遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故
得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多
是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪
能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多呪 即説呪日 
羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶 般若心経

【本文解釈】
観音菩薩は、深く智慧の修行(六波羅蜜の実践)をしている時に、心と身体(五蘊:色受想行識)は実体がない(空:因縁によって生じたもの)ことに気付いて、すべての苦悩から解放された。
舎利子よ。すべての存在(色=モノ・現象)は実体がない(空)のである。色は即ち空で、空は即ち色である。すべての存在(色)だけでなく、これらを通して「感じるもの、想うもの、行うもの、認識するもの」(意識:受想行識)も、すべては実体がない(空)のである。
舎利子よ。この世のすべての存在は実体がない。生ずることも、滅すこともない。垢にまみれることも、浄化されることもない。増えることも、減ることもない。
この世のすべてが空だから、心と身体(五蘊:色受想行識)もない。五蘊に備わっている六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)もない。また六根で感じる六境(色・声・香・味・触・法)もないのだ。
眼に見える世界も意識の世界もない。無知(無明)であることもなく、無知が尽きることもない。また老いること死ぬこともなく、老いること死ぬことが尽きることもない。
苦集滅道(苦諦、集諦、滅諦、道諦=四諦:4つの真理)もないし、智慧もなく、また智慧を得ることもない。だから何も得ることもないのだ。
菩薩は、智慧の修行(六波羅蜜の実践)を実践して悟っているので、心を迷わすものがない。心を迷わすものがないのだから、恐れることは何もない。
すべての存在を逆さまに観るような妄想の世界から遠く離れ、安らかな境地(涅槃)に辿り着いた三世(過去・現在・未来)の仏たちは、智慧の修行(六波羅蜜の実践)をしているのだから、最上の智慧(六波羅蜜)を体感しており、全ての苦しみから解放され完全なる悟りを得ているのだ。
それが偉大で神秘的なる真言(呪文)、無明を明らかにした真言(呪文)、超えるものなき真言(呪文)、比べるものなき真言(呪文)なのである。
それは全ての苦しみを取り除いてくれる偽りのない真実である。そして智慧の修行(六波羅蜜の実践)について、次のように説かれた。
梵語 :ぎゃーてい ぎゃーてい はーらーぎゃーてい はらそうぎゃーてい ぼーじそわか。(梵語の和訳 :往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に完全に往ける者よ、それが悟りだ、幸あれ)
以上が智慧の修行(六波羅蜜の実践)の神髄(真言)である。
あとで読んでみると、なかなか分かりやすく表現することの難しさを感じざるを得ないが、これをよしとする。
感謝!