●哲学を考える⑤  哲学の歴史を知る②

③ 近世哲学(15~18世紀)
人間性への回帰(ルネッサンス)がブームになって、近世は哲学が鮮やかに息を吹き返した「哲学の黄金期」である。西洋哲学におけるスター的存在が次々と生まれ、人間の意識や存在に注目が集まった。
近世に入るとルネサンスの勃興と宗教改革により、それまで「神の教えが全て」という価値観の中で生きてきた人々にヒューマニズムの潮流が起きた。古代ギリシャやローマに由来する人間中心の文化は、瞬く間にヨーロッパを席巻し、哲学が生き生きと花開いていった。人間は素晴らしい。その思想に焦がれるように人間が持つ能力の可能性、そして「私」に注目されるようになったのも、この時代の特徴である。哲学が長きにわたり追い求めてきた「真理」は、遠く高みに存在するのではなく、人の意識が決めるものだ、という認識が支持されるようになった。
デカルトが「我思う、故に我あり」と「意識」の存在を発見し、主体と客体を分けたことは、大きなインパクトを与えた出来事だった。ここから人間が持つ知識や、神や善悪といった観念に目が向け始められた。ここで二つの大きな潮流が生まれた。一つはデカルトやスピノザ、ライプニッツに代表される大陸合理論で、人は生まれつき「生得観念」を持っているという考え方である。これに対してベーコンやロック、ヒュームが提唱したイギリス経験論は、人は経験によって知識を身に付けるとした。
       

④近代哲学(18~19世紀)社会構造や宗教観の変化などにより、哲学にも新たな発見がもたらされるのが近代。地球全体が戦争へと向かっていく中、人間やそれを取り巻く世界への理解が深められた。
近代に入るとヨーロッパでは市民革命産業革命などが起こり、ルネサンス期に勝るとも劣らぬ激動の時代を迎えた。そして哲学においては、この時代に後進国であったドイツを舞台にドイツ観念論と呼ばれる思想が花開いていった。


口火を切ったのがカント。彼は大陸合理論とイギリス経験論を統合し、更に人間に認識できるものは非常に限定的だとする「物自体」という考え方を発表。カントから始まったドイツ観念論は、フィヒテシェリングによって更に洗練され、ヘーゲルによって完成された。ヘーゲルが打ち出した理論で最も有名なものが、「弁証法」である。

ヘーゲルの弁証法、思考だけでなく世の中の全てにおいて、物事が発展するために必要不可欠なものと考えた。弁証法を用いることにより、人間は知識の中でも最高の段階である「絶対知」に至ることができる、理性は万能であるというのが彼の主張である。中世初期に社会を支配していた宗教や神の面影はすでになく、人間が自らの力で物事を切り開いていける主体的な存在であるとする物の見方がよく現れている。
次回に続く