■資本主義と社会主義、その先にあるもの④

「 資本主義と社会主義、その先にあるもの」について、視点変えして考えていく際に、立石一真氏が50年前に未来学会で研究発表した未来予測理論「SINIC理論(イノベーションの円環論的展開)」が参考になるかもしれないので紹介しておく。 

SINIC理論(Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution)とは
⦁ 科学/技術/社会の間には、ツーウェイの相互関係がある。
⦁ 新しい科学が生まれると、その科学からシーズ(種)をもらって、新しい技術が開発される。その新しい技術によって、社会をイノベート(革新)していく。
⦁ 逆に社会から出されるニーズ(要望)を捉えて、これを満足する新しい技術を開発する。新しい技術によって、新しい商品が生まれるという関係もある。また必要があったら、この技術が科学にインピタス(刺激)を与え、必要な科学をつくり上げることもある。

⦁ SINIC理論とは、このシーズとイノベーション、ニーズとインピタスの間に、サイクリック・エボリューション(円環論的展開)という関連があることから名づけた。技術を媒介として、科学と社会が円環し合っている。
⦁ この3つが円環論的な関係で、お互いにだんだん進歩していく源は「人間の進歩志向的な意欲」である。

SINIC理論では、資本主義(物質的豊かさ)が始まって以来の工業社会の最後にあたる「①情報化社会」が終り、現在はまさに「②最適化社会」の真っただ中にあり、その後には「③自律社会(精神的豊かさ)」に移行していくように考えられている。現在の②最適化社会は、「破壊と創造が交錯する20年」と呼ばれており、特にこの5年間の変化は「破壊と創造が交錯する20年」が実感を伴って進んでおり、今から残り5年の変化は、加速度的に想像もつかない変化に見舞われるような予感がしている。

SINIC理論の調査内容を整理すると、以下のとおりである。
①情報化社会(1975~2004年) :工業社会の最終段階になる
*工業化社会:生産者視点を重視 ⇒最適化社会:生活者視点を重視
 物質的豊かさ(効率性や生産性)   精神的豊かさ(喜びや人間性)
②最適化社会(2005~2024年) :破壊と創造が交錯する20年
*商品を売る時代から課題を解決する時代へ(ソリューション・ビジネス)、そして地方分権へ向かう ⇒環境・安心・安全・健康
*工業社会と自律社会の価値観が激突し、葛藤しながらバランスを取って、自律の為の最適状態が作り出されていく。 ⇒業態改革は異業種連携で
*個人と社会、人と自然、人と機械が最適なバランスを保ちながら融合 :一人一人が喜びを追求する社会 ⇒ソーシャルニーズ・オリエンテッド
③自律社会(2025~2033年) :知識産業から智慧の産業へ
*個人個人は自ら考え、自ら望む人生を歩む
*自分らしく生きる :オンリーワンを目指す社会。社会からの束縛を受けずに、自分の決めた規則に従って生きるようになる⇒ある意味厳しい社会 
*「機械に人が合わせる」(フィードバック)から「機械が人に合わせる」(フィードフォワード)時代へ ⇒経営の自律、事業の自律、個人の自律

いずれにしても、SNS普及を推進してきたIT技術は、「クラウド、ビッグデータ、IoT、AI」を活用することで、企業や社会を大きく変革しつつあり、社会構造の見直しまで迫られている。従来、想定されなかったことが次から次への発生し、人間社会に与える影響が大きくなってきており、そろそろ「デジタル技術のコントロール」が必要な時期に来ているのかもしれない。