■資本主義と社会主義、その先にあるもの②

アダムスミスから始まった資本主義(自由な放任政策、小さな政府、国家からの自由)は時代が推移していく中で、「恐慌、失業、貧富格差、独占、インフレ」などの弊害が目立ってきた。それらの弊害をなくすために、大きな流れとして①ケインズの主張する修正資本主義(政府の介入、福祉国家、国家による自由)と、②マルクスの主張する社会主義(生産手段の国有化、計画経済、利潤追求の否定)が生まれた。
その後、英米などで採用した修正資本主義においては、「行政機構の肥大化、財政赤字の拡大」などの弊害が発生し、ハイエクやフリードマンが主張する新自由主義(小さな政府への回帰、規制緩和)の下で、アメリカでは「レーガンのレーガノミクス」、イギリスでは「サッチャーのサッチャリズム」を推進し、一時は経済回復したが「双子の赤字(財政赤字と貿易赤字)」を拡大して、今もその後遺症に苦しんでいる状況にある。
一方でソ連、中国などの社会主義国においては、中央集権で計画経済の問題として「競争原理が働かず労働意欲の減退、魅力ある商品なし、国民の自由制限」などの弊害が発生し、資本主義社会との経済格差が拡大してしまった。結果としてソ連崩壊やベルリンの壁崩壊などが起こり、社会主義国それぞれの政治・経済体制の見直し(修正社会主義化)が行われた。


第一学習社「政治・経済」教科書より
その後、市場経済がますますグローバル化していく中で、さまざまな技術革新によるデジタル革命が急進展したことで、グローバル社会の高度化・複雑化が増し、従来社会の仕組が機能しなくなりつつある。具体的には、
①国家が企業をコントロールできない :グローバル企業の経済成長により、国家&企業の経済力ベスト100の中で、企業が70企業、国家は30国家と、企業の優位性がますます強まっていく状況にある。最近のGAFAの時価総額が、世界3位のドイツGDPを追い越したとの話もある。グローバル企業がグローバル経済圏を構築し、企業実態を国家が把握できなくなってきている。


②国家が金をコントロールできない :国際通貨として米ドルを中心にユーロ、日本円、英ポンド、スイスフランがあるが、中国元の台頭、キャッシュレス化、決済の多様化、仮想通貨の出現、フェイスブックのリブラの問題など、従来の金融コントロール体制(中央銀行のシステム)までもが、脅かされ始めている。
③国家が政治をコントロールできない :IT技術やSNSの発達などにより国家間競争が多様化しており、「国家機密の暴露、陸海空軍のほか、宇宙軍やサイバー軍なども配備したり、監視社会の進展、情報の肥大化やフェイクニュースの氾濫、フィルターバブル現象による国民意見の2極化、多極化」など思わぬ方向に展開しつつあり、国民の未来への不安・不満も拡大し、多くの国々においてポピュリズムが蔓延し、国家分断現象が発生している。
④ 世界が技術をコントロールできない :IT技術の進展により、神の領域に入り込むほどの技術革新が至るところで発生している。一方で、従来は想定する必要のなかった新技術と倫理道徳のあり方まで見直す必要が出てきている。例えば、人命や社会インフラに対するAIのブラックボックス対応がある。兵器ではAI兵器、ドローン兵器のあり方、医学ではクローン人間、遺伝子操作への対応のあり方、個人情報保護、スコア評価システムの適用範囲など、その影響は幅広く存在し、世界的な倫理道徳の劣化を前提に、未来を考えると空恐ろしくなる。
ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモ・デウス」に書かれているような「人間が神を超える」時代に、このまま突入すると、とんでもないことになるであろう。

次に続く