■最近思うこと③ 

③グローバル企業と自国中心主義国家との軋轢

今まで①で「企業のグローバル化・巨大化(独自経済圏の構築)」を、そして②で「国家の自国中心主義化&国内2分化(2極化)」のことを採り上げた。従来は国家の管轄下で企業活動が行われてきたが、すでに経済力においては、国を凌駕する企業がますます増加傾向にある。2年前の資料になるが、世界の国々とグローバル企業の歳入(売上)を多い順に並べると、ベスト100の中に国は30カ国、企業が70社で構成されてウォルマート1社しか入っていないが、今後はますます企業数が増加していくことが想像できる。



ある意味では、国が企業をコントロールするのではなく、企業が国を選ぶ時代になってきているのかもしれない。具体的にいうと、「租税回避」「ISD条項」」「既得権益」などがある。
「租税回避」については、税収を求めて国家間での税率引き下げ競争が行われた結果、企業が税を納める国を選ぶことにより、納付額の10%(25兆円)が収められていないと言われている。
 
「ISD条項」とは、自由貿易協定締結国間の投資家対国家間の紛争解決条項のことで、企業が国家に対して損害賠償請求権を有することになる。大企業が弱小国に国家予算の半分くらいの金額を賠償請求したケースも出ている。
「既得権益」については、国の施策を分析すると、既得権益者(金持ち、大企業など)のロビー活動等により施策の45%牛耳っていると言われている。 
 
一方で「米国・EUのアップル提訴(欧州での全利益を税金の安いアイルランドに計上した件)」「GDPR(EUの一般データ保護規則でGAFAに制約をかける)」「国境を越えた売上に対する課税化」「ロボット課税」など、国がプラットフォーマー企業に要求を突き付けたりしている。
「企業がグローバル化に拍車をかけているのに対して、国は保護主義化が進展する」という相反する動きの中にあり、今からはますます軋轢が広がっていくであろう。
国は中央集権国家が広がり、企業は世界経済圏を更に広げ一極集中化したりすると、その組織を動かすトップの倫理観で、社会は大きく変化する。このまま推移していくと、悪が蔓延る大変な時代・社会を迎えることになる。
国と企業が歩調を合わせて、人間が暮らしやすい社会づくりをしていくことに期待したい。