■科学と芸術の接点を訪ねて①

4月16日に天神塾(星崎塾長)の特別研修会が行われ、早稲田大学基幹
理工学部表現工学科の坂井滋和教授の話を聞く機会があり、非常に大きな刺激を受けたので紹介したい。「科学と芸術の接点を訪ねて」というテーマでの話である。
坂井教授は表現工学科の中で映像コンテンツ設計/制作が専門とされている。具体的な作品実績としては、「地球大進化」「宇宙・未来との遭遇」「海・知られざる世界」など、多くのNHKスペシャル番組の映像を担当されている。 
 
坂井先生、横山、星崎塾長

レオナルドダビンチ
今回の話は、早稲田大学に貢献した人に1年間の遊学をプレゼントする仕組みを使い、2017年4月~2018年3月にかけて、スウェーデンのウプサラ大学、オランダのアムステルダム応用化学大学などで自由研究や講義などを行った時に見聞したことを纏めつつある仮資料「科学と芸術の接点を訪ねて」を使った初めての出来立てホヤホヤの講演とのこと。
話の内容としては、今はBranch point(分岐点)を迎えており、「自分が活動してきた意味は何か?」「今後はどのような時代になって行くのか?」を考えながら、今回の旅を続けていった話から始まる。
レオナルドダヴィンチは、今でいうと技術者であり科学者であり芸術家であるが、昔は科学・技術・芸術などという学術を分けた発想はなかった。芸術家の始まりは16世紀のミケランジェロ、科学者の始まりは17世紀のガリレオあたりであり、技術者の始まりは18世紀のニューコメンやジェームス・ワットあたりになる。従って科学・技術・芸術とが完全分化したのは18世紀になってからである。
ヨーロッパではキリスト教が絶対的なものとして、民衆の生きる基軸になっていたが、16世紀になって民衆の教会への信頼が揺らぎ始めた。コペルニクスが教会の主張してきた天動説に異を唱え地動説を主張し始めた。15世紀にグーテンベルグにより開発された活版印刷(メディア革命)を活用して、マルティンルターが各地の教会に「教会への質問状95」の張り紙を張り巡らし、ついに宗教革命に至った。教会の権威が失墜する中で、17世紀になり絶対的なもの(民衆に説得力のあり生きる基軸にできるもの)として科学が誕生した。基軸が宗教から科学に移っていった。具体的にはケプラーやガリレオなどが位置と時間を天体観測により説得力のあるものとして天動説の時代から地動説の時代になった。
ガリレオガリレイ
芸術の角度から話すと、14世紀頃の伝統的なキリスト教絵画が教会の権威失墜により衰退し、16世紀になると等身大の人物像などのリアリズム絵画(レンブラントやフェルメール)が興隆し始めた。リアリズム絵画は暗くした部屋の中で明かり窓から入ってきた像をキャンパスに投影して絵を描いていたようである。そのキャンパスが感光紙に変わったのが写真である。リアリズム絵画は写真の誕生により意味をなさなくなり、絵画のほうは心のリアリズム絵画(キュビズム、ポイントリズム)へと移行していった。

次回に続く

レンブラント