■佐々木正さんが語った日本の未来② リンゴマンゴー型の「共創

佐々木氏がイノベーションを起こすために最も大切だと考えてきた「共創の哲学」、即ち「ある人が思いついたアイデアが他者の思考と共鳴して、判断を下したりイノベーションを生み出したりする」ことの大切さを一貫して説いてきた。この「共創の哲学」について、彼の話した言葉を抜粋編集し、「である」調に統一してみた。

シャープとロックウェルの提携が世界初のトランジスタ電卓、さらには月着陸船の第1号を生み出すうえで大きな原動力になったように、異質な者同士の出会いは、技術を大きく飛躍させるうえで欠かせないものである。私は、それを「共創」と呼んでいる。
共創の考え方は結婚と同じである。夫婦でも、相手の立場を理解したら結婚生活は上手くいく。生まれた土地が違っていても、相手のことを理解できたら上手くいくのである。

私にとって、この共創の考え方の原点は「リンゴマンゴー」にある。リンゴマンゴーというのは何かというと、私が台湾にいた学生時代に、不可能と思われていた北国のリンゴと南国のマンゴーの接ぎ木に成功して生み出した新種マンゴーのことである。
 当時、北国のリンゴと南国のマンゴーは、年輪が合わないので接ぎ木は難しいとされていた。しかし数学的な発想で、枝の切り方を斜めにするなどして工夫をすることで、接ぎ木を成功させる手法を編み出した。そうして誕生したリンゴマンゴーは、瞬く間にフィリピンや中国の福建省、そしてメキシコまで広がり、日本ではスーパーのヤオハンが目玉の商品として扱うなどして普及していった。



この、リンゴマンゴーの話は、アップルのスティーブ・ジョブズにもしたことがある。彼に会った時に、彼はまさにヒッピーみたいな容姿だったな。そんな彼に、「リンゴマンゴーの精神に基づいて、ライバルのビル・ゲイツとも絶対に会わないとあかんで」と言った。そして彼等二人が会って話し合ったことで、イノベーションが起きたと思う。
孫(正義、ソフトバンク社長)さんにも、共創の大切さは伝えた。孫さんは、「あれはダメだ、これは当たる」という勘を持っている。何というか、才能なんだろう。技術の本質を知っているんだろう。孫さんだけではなく、最近はそういう人がぼつぼつ現れ出しているので、これで日本は救われるなって私は喜んでいる。

振り返れば私は、真空管、半導体、液晶、太陽電池と、一貫して「エレクトロン(電子)」の世界に身を置いてきた。幸いにも、こうして数えで100歳まで生きてこられたわけだが、「知恩報恩」と言うか、死ぬまでにこれまで生かしてくれた恩に報いたいと思っている。
生命が生き延びる「場」さえ維持できれば、そこで世の中を良くするイノベーションは必ず生まれる。
かつて私がそれまで難しかったリンゴとマンゴーの接ぎ木に成功し、リンゴマンゴーという新種を生み出しのと同じように、多様性のある場があれば、そこで異質の才能がぶつかり合う「共創」によるイノベーションを起こすことができる。

佐々木氏の話を聞いて、強い共感を持った次第である。そしてその底流に流れるものが「共育塾」
「共育NW」の理念に共通するものだと感じている。
今からの時代は「企業連携」それも「異業種連携」が大切である。しかし相手を知らない経営者同士は「相手を信じない」「自分さえよければいい」と考えがちで、私の経験からいうと中小企業の「企業連携」はなかなか難しい。
その点で共育NW仲間は同じ価値観を学んでおり、「相互信頼」「Win-Winの関係」を得やすい異業種仲間であり、企業連携・異業種連携はうまくいく確率が高まると思っている。
今からは異業種連携の推進活動に力を入れたいと考えている。