■佐々木正さんが語った日本の未来①

日経ビジネスオンラインの記事を活用して、つい先日亡くなったばかりの世界的技術者である元シャープの佐々木正氏の未来予測について触れてみたい。
シャープ元副社長の佐々木正氏が1月31日、肺炎のため102歳で永眠された。
トランジスタ電卓を日本で初めて開発し、LSI(大規模集積回路)や液晶、そして太陽電池など世界の半導体産業の基礎を作り上げ、戦後日本の発展をけん引した技術者である。ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏や米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏が若かりし頃に、佐々木氏を頼ったエピソードはあまりにも有名である。

晩年は、96歳の時に立ち上げたNPO「新共創産業技術支援機構(ITAC)」を通じて、佐々木氏がイノベーションを起こすために最も大切だと考えてきた「共創」の哲学を広めると同時に、ワイヤレス給電などの新たなテクノロジーの開発を支援してきた。
1世紀以上を生きた世界有数のエンジニアが、今からの世の中の変化をどのように捉えていたかは、非常に興味のあるところである。日経ビジネスの記事の中から抜粋して文章構成を行った。

最近では、AI(人工知能)が現実のものになっています。
ただ、現在のAIは数字や理屈の世界から出ていません。数字や理屈で表せない世界をどう扱っていくのか。三途の川のような夢の世界もその一つかもしれませんが、「コンピューター」はいずれ、こうした領域にも入り込んでいくでしょう。
私はそれを、「カンピューター」と呼んでいます。理屈ではない、「勘」の領域にまで進出したコンピューターです。今は、コンピューターが進歩したといっても、人間は物事を判断する時には勘に頼ることが多い。しかし、いずれは「勘とは何か」という問題もコンピューターは解決していく。
その先は、勘だけではなく全ての人間の判断を模倣できるようになる。私はそれを、判断の「判」を取って「ハンピューター」と呼んでいます。そうなった時、人類の脳とAIの差はよく分からなくなる。つまり、人類はAIと「二人三脚」で歩むようになるはずです。

そんな世界では、思考が他者に瞬時に伝達する「テレパシー」のような技術も、人類は手に入れているかもしれません。
ある人が思いついたアイデアが、瞬時に他者の思考と共鳴して、判断を下したり、イノベーションを生み出したり。要するに、私が昔から主張している「共創」は加速する。それに向けて、人類も進化していかなければならない。
一つ、アドバイスできることがあるとすれば、もはや人類もコンピューターも、数字や理屈だけを頼りにしていてはダメだということです。テレパシーや念力といった、これまでは人知を超えた世界だと思われていたような現象も、科学の力で人類の未来にどのように活用していくかという発想が、これからは求められる。そういうことまで考えないと、人類はコンピューターに使われるような世界になってしまいかねない。
 人類が高い志を掲げて進化し続ければ、100年後の日本、そして世界は安泰です。

 佐々木氏の予測は、「コンピュータ活用の社会⇒カンピュータ活用の社会⇒ハンピュータ活用の社会」へと変化していき、人類の脳とAIの差はよく分からなくなる。つまり人類はAIと「二人三脚」で歩むようになるであろう。」と言っています。要約すると、
*夢の世界もコンピューターの領域に入る
*人類はAIと二人三脚で歩む
*数字や理屈だけの世界は終了

同じ関西出身で、同じ年代を生きてきた未来予測理論のオムロン・立石一真氏との交流を調べてみたが、あまりなかったようで非常に不思議に感じている。
多分、立石一真氏の「SINIC理論(科学・技術・社会の円環論的展開)」と異なる視点からのアプローチで、相容れないものがあったのかもしれない。