■ トランプ大統領のこと

 米国大統領選挙で、泡沫候補だったトランプ氏が他候補を蹴散らして共和党候補となり、民主党候補のクリントン氏と戦い、僅差でトランプ氏が勝利するという大方の予想を覆す結果となった。ロシアがクリントン候補のイメージダウンさせる偽情報を多量に流したというCIA発表もあった。何となくスッキリしない大統領選挙結果となった。英国のEU離脱に続く世界中が驚く現象が再現されたわけである。
このような現実を目のあたりにすると、「世の中が何かおかしくなってきている」と感じる人は多いのではないか。
 選挙手法としてツイッターを徹底活用し、他の共和党候補をこき下ろし勝ち抜き、従来のマスコミを徹底攻撃、クリントンを徹底攻撃、今までの政治権力は全ておかしいことをして労働者を追い詰めているとし、「低所得白人労働者層のための政治」を掲げ、結果的に、米国内では保守とリベラルの対立、民族や宗教の対立を顕在化させてしまった。後戻りできない「パンドラの箱」を開けてしまった感がある。
また「メキシコとの国境に壁を築き、その費用をメキシコに払わせる」「低所得白人労働者のために移民を抑制する」「イスラムからの移民は受け入れないことでテロから米国を守る」「ロシアと仲良くしISを壊滅させる」などなど過激なワンフレーズ・メッセージを発信し続けて、世界各国との従来の関係を覆すようなことも発信してきた。欧州の既存政治を否定する同様な自国保護主義・排他主義的な政治勢力を勢いづかせる結果にもつながっている。
 この延長戦にある世界は、各国で自国中心主の利害対立を起こし、宗教や民族間の対立を助長し、世界各地で混乱を次々と引き起こすことになることが危惧される。
世界で一番貧しい大統領と言われたホセ・ムヒカが最近の社会・経済情勢について語っていることがある。
「人々は政治不信に陥り、現在の社会や経済のシステムに不安を持つようになっている。その結果、今日、世界中で起きているような大衆の不安を煽る排他的なポピュリズムを招いている。人々を、いとも簡単に極端な国粋主義者に変えてしまう。そして彼らは、「アメリカ人のためのアメリカ」などと叫ぶのです。これはグローバル化した現代の世界に生きる全ての人々に不幸をもたらすことになる。」
非常に考えさせられる重い言葉である。