■会社の目的

 日本精神の考察⑧で止まって約一月経ってしまった。仕事が忙しかったこともあり、思考が完全に
途切れたために、⑨の書き出しがなかなか進まないという事実に、非常に戸惑っているところである。
そのような経緯で、今年は日本精神の考察⑧で止めて、正月休みを使って思考を繋がるようにした
上で再度⑨にチャレンジすることとした。

 
 そこで今回は、日経ビジネスの「賢人の警鐘」に取り上げられていた
伊那食品の塚越会長のコラム「会社の目的」をネタに話を進めたい。
塚越会長は、『「会社の目的」は「人を幸せにすること」に尽きる。』と
断じており、『会社の目的は業績を上げることだと勘違いしている人が
ほとんどである。業績を上げることは手段の一つであるが、目的ではない。』と言っている。
『トヨタの「なぜなぜ分析」で追究していくと、どんな事柄でも最終的には「自分と周囲を幸せにすること」に行きつくことが分かる。』『目標は方向を示すもので、途中で環境が変われば柔軟に変更しても構わない。しかし目的は変えてはならないし変わらない。経営者は絶対に目的を見失ってはいけない。「人を幸せにする」という会社の目的は万国共通の心理である。』と述べている。凄い言葉であると思う。
 伊那食品はカンブリア宮殿で2012年に放映され、それ以来、興味をもって追いかけてきた会社で、塚越会長の基本思想には強く共感しているところである。年輪経営を打ち出しており、「売り過ぎない、作り過ぎない、毎年少しづつ成長」を行っている。残しているメモを以下に記載しておくので、どのような会社なのかをイメージしてもらいたいと思う。
*社是 :いい会社を作りましょう ~たくましく そして やさしく~
 ※会社は永続することが最も大切
 社員が幸せになるような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する
*社是を実現するための会社としての心がけ
 ・遠くを図り、進歩軸に沿う研究開発に基づく種蒔きを常に行います。
 ・永続のために、適正な成長は不可欠です。急成長を戒め、環境と人との
  調和を図りながら、末広がりの堅実な成長を目指します。
 ・収益性、財務、営業力、開発力、取引先、知名度、メセナ等について
  企業規模との好ましいバランスを常に考えて行動します。(身の丈経営)
*社是を実現するための社員としての心がけ(社員=伊那食ファミリー)
 ・ファミリーとしての意識を持ち、公私にわたって常に助け合おう
 ・創意・熱意・誠意の三意をもって、いい製品といいサービスを提供しよう
 ・全てに人間性に富んだ気配りをしよう
 ・公徳心を持ち、社会にとって常に有益な人間であるように努めよう

 *寒天を基軸の事業 :寒天素材、寒天商品、廃棄物活用商品
 *商品は極力継続する :約200種類、開発商品在庫を持ち少しづつ商品化
 *社員のモチベーション最優先 :自主性尊重、各種助成制度充実
 *抜擢もある年功序列賃金 :社員の持ち家率8割
 *終身雇用 :協調性重視、退職後の再雇用
 *凡事徹底 :当たり前のことを、きちんと
 *価格 :寒天を相場商品から定額商品へ
 *品質 :人材の1割を研究開発に


 この考えについて、世界のトヨタも豊田社長自らが塚越会長に教えを乞うて、現在はトヨタも年輪経営を打出しているようである。トヨタがアメリカで品質問題を起こした時以来、豊田社長の話した言葉として、「急成長をしたための歪みとして品質問題が発生した。今からは原点に戻り年輪経営をやっていく。」というようなことを述べたと記憶している。
豊田社長の「塚越会長に教えを乞う」姿勢の素晴らしさと、「規模の大小を問わず、本質は同じところにある」ということを実感している。