■人工知能A:人工知能の全体像

  ディープラーニングについて詳しい人からの情報提供を受けながら調べて整理していくうちに、徐々に人工知能の進む方向や位置付けが分かるようになってきたので「人工知能の全体像」という形で紹介しておきたい。
内容的には、東京大学准教授松尾豊氏の著書「人工知能は人間を超えるか 〜ディープラーニングの先にあるもの〜」などを参考に、他情報を合わせて編集作成したものである。




@ 人工知能の4つのレベル
レベル1 :単純な制御プログラムを人工知能と称している
 例)エアコンや掃除機、洗濯機、電動シェーバーなどの家電製品に簡単な制御プログラムを搭載しているものなど。長い歴史のある「制御工学」「システム工学」の範疇である。
レベル2 :古典的な人工知能
 例)将棋のプログラムや掃除ロボット、質問に答える人工知能などのことである。いわゆる古典的人工知能であり、入力と出力を関係づける方法が洗練されており、組み合わせの数が極端に多いものである。
レベル3 :機械学習を取り入れた人工知能
 例)検索エンジンに内蔵されていたり、ビッグデータをもとに自動的に判断したりする人工知能である。機械学習(サンプルとなるデータをもとに、ルールや知識を自ら学習)のアルゴリズムが利用される場合が多い。
レベル4 :ディープラーニングを取り入れた人工知能
 例)機械学習をする際のデータを表すために使われる変数(特徴量)事態を学習するものである。米国ではディープラーニング関連分野の投資合戦、技術開発合戦・人材獲得合戦が熾烈を極めている。最もホットな領域である。

※分かりやすくビジネスマンで表現すると、
レベル1:言われたことだけこなすアルバイト
レベル2:たくさんのルールを理解し判断する一般社員
レベル3:決められたチェック項目に従って業務改善をする管理職
レベル4:チェック項目まで自分で見出して仕事をするマネージャー
という言い方もできるかもしれない。
※ディープラーニング応用のリスクとして、ミスを犯した時に、チェックができない(ブラックボックス)ので、取り返しの付かないミスを犯す可能性がある。現在の人工知能のレベルは、知識・見識・胆識の中の知識レベルでしかなく、倫理にも課題がある。今から人工知能については、対決でなく協調を重視して育てる必要がある。



A ディープラーニングの位置付け
ディープラーニングの位置付けについて、以下のように整理してみた。
「機械学習」とは「人間がプログラミングするのが大変な部分を、機械が自動的に学習できるようにすること。」である。その「機械学習」の中の一つに「ニューラルネットワーク」があり、またその「ニューラルネットワーク」の中の一つが「ディープラーニング」である。
「ニューラルネットワーク」とは、1943年頃に「脳の機能をコンピューター上に再現する」という発想で、人工神経(形式ニューロン)モデルを、米国の外科医・ウォーレン・マカロックと数学者・ウォルター・ピッツが発表したことに始まる。

*第一次ブーム :1958年にローゼンブラットが形式ニューロンをもとに「パーセプトロン」を発表した。形式ニューロンの2層構造(入力層、出力層)のものである。この時代は、まだニューラルネットワーク以外の方式の効果が大きかったため、「パーセプトロン」はあまり評価されていなかったようで、すぐに下火になった。
*第二次ブーム :1986年にルーメルハートが「パーセプトロン」を改良した「バックプロパゲーション」を発表した。これは2層構造から3層構造にしただけのもの(入力層、隠れ層、出力層)で、まだその頃は技術的・実用的に4層くらいまでしかできなかったため、4層構造くらいでは大きな効果は見いだせない状況にあった。この時もあまり脚光を浴びることはなかった。
*第三次ブーム :ベンギオやヒントンなどの研究者によって2006年頃に、ようやく「ニューラルネットワークの層の数を増やしても、うまく学習する方法」が編み出された。これが「ディープラーニング」で、今までに提案されていたあらゆる手法を圧倒する性能が出て、世界中の研究者が度肝を抜かれた。アルファー碁では、12層になっているようであるが、多様な分野で多くの研究者が研究を始めており、現在、急速に進化しているところである。
メモリー容量、計算スピードも大幅な技術革新が進み、クラウド、ビッグデータ、IoT、AI技術進化の相乗効果で、ブレークスルーが起きているようである。