■エマニュエル・トッド

 TBSテレビのニュース番組でで「世界と日本はどうなる?E.トッドの予言」が放映され、今まで意識すらしていなかった新たな視点を得ることができた。エマニュエル・トッド (Emmanuel Todd) は、フランスの人口学・歴史学・家族人類学者である。
下記のような人口統計による定量化と家族構造に基づく斬新な分析で知られる。
        

 彼の研究に基づき、今までなかった観点からの未来予測がされるようになり、それが当たるケースも多く、現代の予言者のような取り扱いもされるようになったようである。具体的な予言?には、「アラブの春、ソ連崩壊、アメリカの衰退、フランスでのテロ発生」などなどがある。

 トッド氏の話では、「社会動向は、教育水準と出生率がキーワードとなる。不平等の拡大が進んでいるが、教育のレベルアップで教育格差が生まれ、再階層化が進んでいることに起因している。」と日本でも問題になっている「新たな教育格差の問題」を指摘していた。出生率についても古代ギリシャ時代からの社会に与える影響を研究した上で、未来予測をしているようである。
そして「最後に新たな予言をする」と以下の様な話をしていた。
ヨーロッパの今後20年間は、EUの分散・分解の歴史となるであろう。「移民や難民の問題」「イスラムの問題」が宗教戦争とか文明の衝突と言われているが、各国の指導者に問題のすり替えとして利用されるのではと危惧している。そしてリーダーが責任を取らない。そしてこのような事象は、ナチスの時代に酷似しているので要注意である。

 最後に結論として、
先進国が危機から脱する出口が見えないのは、リーダーの問題以外に社会の中間層、中核をなす人々の「自分さえよければいいというエゴイズム」「自己満足の強いナルシズム」から生まれている。
これを解決するためには、「よき人生とはどういうものか」という根本的な倫理的な問題について考えるべきである。そして各国が「あるべき姿」を模索していかねばならない。 

日本については、
日本の最高の長所は、日本の問題点でもある。それは完璧を求めることに固執することである。日本は不完璧さや無秩序を受け入れて、新たな秩序づくりを行うことが必要ではないか
と話していた。世界的な視点でいうと、「難民の受け入れ問題」「規制緩和の問題」などではないかと想定される。

ウェブで調べてみると、
日本と周辺国における歴史認識問題については、「欧州でもユダヤ人虐殺の贖罪意識が大きすぎるため、パレスチナ民族の窮状を放置しがち」としてヨーロッパの状況を踏まえた上で、「日本は戦争への贖罪意識が強く、技術・経済的にもリーダー国なのに世界に責任を果たせないでいる。過去を引き合いに出しての"道徳的"立場は、真に道徳的とはいいがたい。」として日本の態度を批判している。
また経済至上主義については
合理性と効率性を金科玉条にしたグローバリゼーションはアングロサクソンの思考と習慣が生んだものだと見ている。
そして、そういうものがグローバルな価値観になるなんてことは「幻想にすぎない」と見切ったわけである。グローバリゼーションは、アングロサクソンがアングロサクソン独特の「短期利益の最適化」という習俗が確立していった。ロジックの内的一貫性はあるものの、つねに過剰消費を生みかねない。
新古典派の経済学「最小の費用で最大の利益を求める社会」はあり得ない
経済はもともと社会に埋め込まれているもので、「経済は社会や家族の中にあるはず」とトッドは考えている。
非常に共感することが書いてあったので紹介しておく。