■ソーシャルメディア・マーケッティングC

 ドラッカーとの出会い
についてであるが、コトラーが発表した「マーケティングはNPOの経営と生活者にどう役立つか」について書いたのを読んで、ドラッカーから電話をかけてきて、自分に会いに来たそうである。その頃、ドラッカーは既に有名な学者であったが、コトラーは無名であり、大御所からのアプローチには、相当感激したと書いている。
マーケッティングの考え方は応用範囲が広く、「場所(都市、地域、国家)」「人(有名人をつくる)」「思想(性の平等)」「信条(栄養価の高い食品の摂取)」にも応用できると主張し、ソーシャル・マーケッティングと称するようになった。NPOにとっても顧客のニーズ、願い、考え方を深く理解することであり、それにより顧客の生活を向上させることが可能となる。
企業の目的は顧客の創造である。企業の基本機能はイノベーションとマーケッティングの2つしかなく、その一つだけ強い企業は成功することができない。マーケッティングの目的は、セールスの必要をなくすことであり、目的、目標、業績評価の方法を設定することの重要性を、ドラッカーから学んだようである。

  日本の課題についても触れている。
先ず政府に欠けていることとして、「顧客志向」と「イノベーティブに考える能力」だと言っている。
マーケッティングの際に重視することとして、日本では「他社より優れた製品」を基軸に考えており、米国では「他社より優れた広告」と大きく違いがある。
日本は、教育制度、ボトムアップの意思決定システム、終身雇用や提案制度などの人事制度、政府の産業振興や総合商社、メインバンク制が、高度成長期の企業の成長に貢献し、「最後に勝つのは顧客価値」と学んだことがあった。
その後、日本は停滞したが、「傲慢さ、後継者の独創性のなさ、意思決定の遅さ、雇用形態の硬直化、短期利益志向の弊害」などが、今の状況を作ったと厳しい意見を述べている。

 今から活力ある社会を目指すには、革新性に富むビジネスモデルや新製品開発、異業種との共創やクラウドソーシングの活用、テレビ広告からソーシャルメディア活用への移行、最高マーケッティング責任者(CMO)の創設、ブランドに思想を持たせ高貴な目的を持ったマーケッティングへの取り組みなどが必要である。「お客様に学ぶ」姿勢は顧客主義のマーケッティングそのものであり、日本の企業活動に深く根差した最も大切なことだと評価している。