■トタン屋根のケーキ屋さん

 月に一回くらいは長距離散歩(目標:一万歩)をしますが、結構な距離があるので、帰りはバスに乗ることもあります。先週の日曜日にも、家内と二人で街中まで長距離散歩をしました。
歩いて帰るつもりで並木坂通りまで来ましたが、二人ともだいぶ疲れてしまい、近くの喫茶店で休むことにしました。
並木坂通りまで来たこともあり、店の前を何回か通ったことはありますが、行ったことのない「トタン屋根のケーキ屋 ア・ラモート」に寄ってみることにしました。 
平日は2階の喫茶はやっていないそうですが、たまたま日曜日で喫茶室が開いていたこと、そして、いつも午後は自転車で販売に
回っているようですが、たまたま新本さんがいたことなどと偶然が重なり、ゆっくり流れる時間の中で、紅茶とケーキを味わいながら、新本さんといろいろな話もでき、おまけにツーショット写真も撮ることができました。

 新本さんは、自転車に乗って、阿蘇方面など遠方にまで販売に回っているケーキ屋さんとして有名で、養護施設にいた時のことを含めて、生い立ちの感動的な話も、何かの雑誌で読んだことがあります。以前、読んだ記事の記憶に残っていたことと、当日聞いた話を合わせて話を進めます。新本さんは大阪出身で、小さい頃に親と別れて、養護施設で過ごしたとのこと。養護施設時代に、短歌を投稿したことがきっかけで、作家の三浦綾子さんとの出会いがあり、中学卒業を機に三浦さんを頼って北海道に移り住み、その後2年間を、三浦夫妻と一緒に生活したとの話には、ビックリさせられました。三浦綾子さんから生き方に関して、いろいろ教えてもらったことが、新本さんの人生の大きな転機となったそうです。
いろいろ教えてもらった中でも、最も印象深いものとして「使命とは使う命と書きます。あなたも自分の命を精一杯使わないといけない。一つ自分が”これだ!”と思ったら、それに命を費やしなさい。そして余裕が出てきたら、命を人のために使いなさい。」があるそうです。
それらの三浦さんからの教えが、今の自分の考え方の根幹にあるとのこと。ケーキ職人が自分の使命であり、自転車での販売が自分の原点にあり、今からも自転車販売を続けていくとのことでした。(若い頃と違って、最近は少し堪える時もあるそうですが、やれる限り続けていきたいとのこと。)

 熊本との縁をお聞きしたところ、「養護施設の優しくしてくれた先生が熊本出身の人で、その人を頼りに熊本に来たが、既に他県に嫁いでいたことで、お金も使い果たしており、動くに動けず途方に暮れたそうです。金もなく、食っていくために熊本のケーキ屋に勤めたことが、すべて現在に繋がっている」とのことでした。
ケーキ職人になって10年経った時に、坪井でトタン屋根の小屋を見た時に、自分の使命に目覚めて体中に電気が走り、「この小屋でケーキを作り、自転車で売りに行こう!」と覚悟を決めたとのこと。一つ一つの出会いが、新本さんの人生に大きな影響を与えていることを実感し、あらためて「ご縁に感謝」の気持ちを持ちました。
新本さんと会って話をし、「読書が大好きな人、すべてに感謝の誠実な人」の
印象が強く残りました。新たなご縁に感謝!

 最後に一話
紅茶と一緒にシュガーポットを持って来られましたが、そのスプーンが非常に変わったもので、「このスプーンは珍しいですね。」と聞いたところ、「大分の耶馬溪の友人からプレゼントされたものです。桜の木から作ったもので、スプーンにフィットする幹と枝を切りとり、スプーンの部分を掘り込んだ一体ものです。16年間使ってきましたが、本当に丈夫ですね。」横に置いてある手づくりの椅子も、桜の木から作ってもらったそうです。
こんな自然の芸術的スプーンを、私も手に入れたいと思いました。