■日本が世界平和に貢献するK 「独走する日本」日下公人著より
 ― 対比して日本にない三つのもの ―

  さて、様々な対比をした結論として言えば、欧米や外国と比較して日本にないもの
 あるものを、とりあえず三つずつ整理すれば次のようになる。

  日本にないものは、第一に自我がない、自分がない。特に近代的自我、デカルト
 から始まりフランス革命のころ言われた、ああいうのはない。「いいや、自分には
 ある」と言う人も少しいるが、このごろ流行らない。むしろ嫌われる(なお、後から
 説明するように「自我がない」と言っているのは、あくまで欧米に対比してである。
 実際には日本的自我がある)。

  それから第二に輪廻の思想がない。これは、インドや仏教と対比して言っている。

  それから第三は、最後の審判という思想がない。これはキリスト教と対比して、ある
 いはユダヤ教、イスラム教と対比して言っている。








  反対に日本にあるものは、その第一として日本社会には「許し」がある。
 過去は水に流す。たいへん便利なのは「みそぎ」というのがあって、悪いことを
 してももう一回選挙で当選してくると、みそぎは済みました(笑)と、それで通る。
 ふたたび仲間に入れてもらって生きていけるようになる。この根本には「無常感」の
 普及があると思う。何事も有為転変するのが世の常で、永久につづくものはないと
 あきらめる精神である。この考えでいくと、人生はほどほどが良いことになるので、
 日本では原理主義は流行らない。その人は孤立する。

  それから第二に、「世間様」というのがある。「理屈はそうでも世間様が許さない」と
 言うが、そういう何物かがある。

  それから第三に、「お上」というのがある。このお上というのが不思議な存在で、
 世間様とお上が微妙なバランスで成り立っている。その上に許しとか、相手の
 心情を察する、というのがあるから、日本はうまくいっている。

  こういう目で外国を見ると「かわいそうに」と私は思うのである。