■日本が世界平和に貢献するD
  〜世界を魅了する日本の歌謡曲〜由紀さおり ヒットの秘密(2/2)

  前回の終わりのほうで、日本の歌謡曲が醸し出す独特の世界観について、日本近代音楽の父山田
 耕筰が語った「1+1=1」にまつわる話と、童謡歌手であった由紀さおりの世界の二つについて語っ
 たが、それに続けて進めていく。
  
   この二つが共鳴して、日本語を知らない人にも伝わる音楽になっているのであろう。
 多くのミュージシャンや海外の人が由紀さおりの歌について、
 「日本語の響きがすごく音楽に合っている」
 「言葉は分からないが、すごく楽しめるし、心に自然や海が浮かんでくる」
 「由紀さんが歌う日本語には浮世絵のような漂う感覚がある」
 「信じられない みんなが知っている曲だよ。とても良かった 穏やかで 英語だともっと
 テンポが速いし押しが強い。彼女はもとの曲よりも誠実に 穏やかなイメージを伝えている。」
 と語っている。


  音声心理学が専門の重野純さんが、「初めのころ(デビュー当時)はルルルで『ル』というのをはっきり
 おっしゃっていたけれども 現在の方はもちろんルとはおっしゃっているんだけれども 非常にソフトに
 “L”の部分を発音なさって 『ウ』の部分を響かせるように歌っていますね」「日本語は英語などと
 比べて母音が多く使用される言語です。例えばアイ・ラブ・ユーという英語には母音が3つ含まれて
 います。日本語で、それと同じ意味合いを伝えようとすると母音の数は15個になるのです。
 由紀さんは日本語特有の母音の強弱や抑揚を表情豊かにコントロールし、日本語が分からない人たち
 にも細やかな感情を伝えているのでは。」と語っている。
 
  城生佰太郎氏

  音声学の筑波大学名誉教授・城生佰太郎氏が、「由紀さん、
 すごいですよ。フォルマントと呼ばれる声の響き音質を表す
 周波数の帯が普通の人の2倍で8本ある。」「フォルマントの
 本数が多いってことは極めて多種多様な共鳴音を含んでい
 ますっていう意味ですから 豊かな声っていうことになるわけ
 で楽器の種類ということにたとえるならばピアノを核としてそこ
 に管楽器、弦楽器、打楽器がわーっとつながってオーケスト
 ラになるともっと感激する。そういうことですよ。」と話っている。

  また詩人のアーサー・ビナード氏は、「ちいさい秋の話があったんだけど、そのことば
 の向こうにある世界を歌っているんですね。そのことばの向こうにある世界を
 日本語で表現する、そうすると、それが広がって、見えてきますよね、聴いている人は。
 例えば、『ちいさい秋』でも、『おぼろ月夜』でも、海は広いな、大きいなって、それは
 ちょっとでもヒントがあれば、アメリカ人でも分かるし、太平洋を見たことのある人は、
 みんな分かりますよね、海は広い、大きい。
 それをうまく日本語で表現すれば、別に日本語が分からなくても、その現象は分かるし、
 その表現の広がりも出てくるので、たぶん、由紀さんは、日本語を使っているんだけど、
 日本語の中で作品を作っているわけじゃなくて、大きな広がりを持った、ことばの向こうに
 ある対象物を見つめて表現する。そうすると、アメリカ人もそれが見えてくる。」と語っている。

アーサー・ビナード氏

「1969」



最後に世界的に大ヒットしている「1969」の曲名を紹介しておく。

■由紀さおり&ピンク・マルティーニ『1969』
2011年10月12日 日本発売、TOCT-27098 \3,000(tax in) 全12曲
【収録曲】(  )内:オリジナル歌唱アーティスト
1. ブルー・ライト・ヨコハマ(いしだあゆみ)
2. 真夜中のボサ・ノバ (ヒデとロザンナ)
3. さらば夏の日 [Du soleil plein les yeux](フランシス・レイ)
4. パフ [Puff, The Magin Dragon](ピーター・ポール&マリー)
5. いいじゃないの幸せならば(佐良直美)
6. 夕月(黛ジュン)
7. 夜明けのスキャット(由紀さおり)
8. マシュケナダ [Mas Que Nada](日本語版:アストラッド・ジルベルト)
9. イズ・ザット・オール・ゼア・イズ? [Is That All There Is?](ペギー・リー)
10. 私もあなたと泣いていい? (兼田みえ子)
11. わすれたいのに / 原曲[I Love How You Love Me](モコ・ビーバー・オリーブ)
12. 季節の足音 [bonus track]