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   〜世界を魅了する日本の歌謡曲〜由紀さおり ヒットの秘密(1/2)

  今年の7月25日に、由紀さおり・安田祥子のコンサート「SONGS WITH 
 YOUR LIFE CONCERT」が熊本で開催されたので、家内と二人で聴きに
 行った。コンサート終了後に、家内がサイン付きのアルバム『1969』を購入し、由紀
 さおり・安田祥子の二人と握手をして、心から満足して帰途に着いた。
 私は、あまり歌手のコンサートには行ったことがないが、今回なぜ由紀さおり・安田
 祥子のコンサートに足を運んだかというと、NHK番組で由紀さおりが紹介され、
 その話に感動したからである。
 
  今、ジャズ・オーケストラ「ピンク・マルティーニ」と「由紀さおり」とのコラボ・
 コンサートが世界での評価が高まっている。
 そして、「夜明けのスキャット」、「ブルー・ライト・ヨコハマ」、「さらば夏の日」、
 「夕月」、「マシュケナダ」を収録したアルバム『1969』は、由紀が「夜明けのス
 キャット」でデビューした1969年の世界のヒット曲を集めたコラボレーション・
 アルバムが世界中で大ヒットしている。
 そのようなタイミングに、2012年2月21日のクローズアップ現代で採り上げら
 れた。世界を魅了する日本の歌謡曲 〜由紀さおり ヒットの秘密〜
 のタイトルで放映されたが、非常に興味深い内容でもあり、心から感動した。

  今、由紀さおりの日本語の歌声が、なぜ、これほど世界の人々を魅了しているのか? 由紀さおりは
 言う。「本当に分かんない。自分でも何なんだろうっていう感じ。誰かに教えてもらいたいなって思うくらい。」
 そこで由紀さおりをよく知る人物や海外の大物アーティストへのインタビューを敢行。更に音声学や心理学
 などさまざまな分析から浮かび上がってきたのは日本人の多くが忘れている日本語の奥深さ。
 そして日本の歌謡曲が持つ欧米の音楽にはない、ふくよかな表現力。
 今夜は由紀さおりの世界的ヒットの秘密を通して世界を魅了する日本語の歌とはどういうものなのか
 じっくり考えていきます。
 というようなプロローグで始まった。

由紀さおりとジャズ・オーケストラ「ピンク・マルティーニ」の代表トーマス・ローダーデール氏との出会いは、地元の中古レコード店で由紀さおりのレコード「夜明けのスキャット」をたまたま手にしたことがきっかけとのこと。
曲を聞いて、「一瞬で恋に落ちた。夏のそよ風のような美しさ、安らかだけどどこか寂しい気持ち。浮世絵のような漂う感覚。」と、受けた衝撃を語っている。
「43年前の由紀さんの歌に欧米の音楽にはない独特のテンポや声の抑揚など斬新な魅力を発見し、往年の日本の歌謡曲が持つ新鮮な魅力を広く伝えたい。」と、由紀さおりとアルバムを作ることを企画。その狙いは日本の歌謡曲が醸し出す独特の世界観をさらに引き出すことだったそうである。

  その背景にあることとして、二つのことに感銘を受けた。
 一つは、
 日本の音楽家たちは、西洋の音楽が入ってきた明治時代から、限られたことばで
 伝えることを追求し続けてきた。童謡「この道」や「赤とんぼ」を作曲した日本近代
 音楽の父山田耕筰は、その極意をこんなことばで表現している。
 1+1=1
 最初の1は「日本語」、次の1は「西洋の旋律」、その2つを融合することで、「今迄
 になかった新しい音楽を生み出す」という意味合いだそうである。
 1+1の融合により、1段上の西洋にも日本にもないものを生み出し、日本語を理解
 できない人たちにも「思い」が伝わっていくようになったといえる。
 制約があるからこそ、少ない言葉に思いを込めることで新たな深い味わいが出る。
 「一つ一つの言葉に思いを込める。」これは五・七・五の三句・十七音から成る、
 日本独自の定型詩である「俳句」に相通じるもので、歌謡曲と俳句の共通性に
 ついて改めて再認識し、「目から鱗」のような感覚で受け取った。

  もう一つは、
 由紀さおりが、小さい頃から童謡歌手として姉の安田祥子とともに童謡を歌い続けてきてきたことである。
 例えば、「小さい秋」という曲があるが、その「小さい秋」という言葉に対して、由紀さおりは多くの思いを
 込めながら歌っているそうである。
 「季節のうつろい」「夏から秋に向かう、ささやかな変化」「夜中に鈴虫が泣いていたり」「出かけるには
 Tシャツでは肌寒そうで、セーターを持っていこうと思う」「八百屋の店先には、栗や柿が出ていたり」
 「いつも通っている道を歩いていると、銀杏や紅葉が色づき始めたり」そういうことにふっと気付くことが
 「小さい秋」であり、それらを思い巡らせながら歌っていると語った。
 後半の部は次回で紹介する。