■平田会長を偲ぶ
   平田機工株式会社の平田耕也会長が8月7日に急逝された。
 通夜と葬儀は平田会長の意思に沿って身内だけで執り行われた上で、9日に秘書室から連絡を
 受けたが、あまりにも突然のことで、今も、ただただ驚きと戸惑いを感じている。
  平田会長との出会いは、Uターンして熊本に帰ることになった時(昭和57年年末)で、
 私が担当する予定の電子機器工場や熊本工場(植木)を平田会長自らが運転する車で、
 案内していただいたことを、今でもはっきりと覚えている。
 「うちの会社は熊本の田舎にあるが、世界の大企業ばかりが顧客であり、焦げ付きは
 発生しない。」「うちの腕型ロボットは、世界最先端をいくオリジナル・ロボットであり、
 大学を出たばかりの社員に作らせた。」というような言葉が印象に残っている。
   昭和58年から平成7年までの13年間、平田機工にお世話になったが、その間に平田会長から直接
 受けた刺激は、今の私の思考形態に大きな影響を与えている。入社した当時には、会長から聞く「ものの
 考え方とチャレンジ精神」が、私の思考や理解を超えたことが多くあり、ことごとくカルチャーショックを
 受けていた。
 例えば、「平田機工の組織は滅茶苦茶かもしれない。しかし、きちんとした組織の会社がたくさん倒産して
 いるのに、平田機工は潰れていないではないか。」「今から先の売上や生産性を上げるための活動が
 大切で、すでに終わった過去のデータを整理しても何の意味もないだろう。」などなど、その時の私としては
 次の言葉が出てこないことも多々あった。  
               平田機工の経営理念http://www.hirata.co.jp/corporate/philosophy.html
  時が経つにつれて理解できる事柄は増えていき、会長の先見性の凄さや、思いの
 深さを理解できるようになっていった。例えば、自社ロボットの開発、CRT生産
 ラインの戦略商品としての多管種対応の「ロボット着脱器」で世界シェアをゼロから
 70%に持っていったことや、電子機器のデジタル化・ワイアレス化など、先行発想
 されてきたことがたくさんある。生産設備における技術的イノベーションを誰よりも
 数多く発想された方だと私は思っている。
  実際生産しているロボットはhttp://www.hirata.co.jp/business/robot.html
   独特のワンマン体制の中で培われてきた企業体質が根底にあり、私自身の人間的な未熟さもあった
 と思うが、何をやるにつけ両手両足を縛られた行動感覚が強くあり、あることをきっかけにして自分の
 人生に悔いを残さないために、49歳11か月で脱サラをすることとした。社員として最後のご挨拶に行った
 時に、平田会長はなぜか「もし平田機工が潰れたとしても、俺は今からでも新たな事業を成功させる自信が
 ある。」との非常に印象に残る話をされた。多分、私への励ましの言葉だったと勝手に解釈している。
 私が脱サラしたのは平田会長が67歳だった時だったが、84歳で急逝された今、奇しくも私が67歳を
 迎え、私自身が新たな転機を迎えているのかもしれない。
  あとで聞いた話であるが、私が脱サラした時に平田会長が
 「横山は人に使われるのではなく、自分で何かをしたいの
 だろう。」と話をされていたそうである。
 脱サラしたことにより、それまでに溜まっていた心のマグマが一気
 に噴き出てきたような感触もあり、自分自身にとっては今までには
 なかった変化・成長・発展を実感しながら、右顧左眄することなく
 思いっきり活動してきたことに対して、「我が人生に悔いなし」との
 自負を持っている。

  脱サラ後も毎年、平田会長には感謝の意をお届けしていく
 中で、徐々に私の「思い」にも理解を示していただくようになり、
 おかげさまで今日までいろいろな形で交流を続けさせていただ
 いてきた。
 その中でも、平田会長には6年前から主宰している若手経営
 者塾「共育塾」で毎年、塾生との会食懇談に協力していただいて
 きたことが最も印象深いことである。
 今年も7月20日に会食懇談を設定したが、7月に入ってから治療
 とリハビリ入院をされたためにホールドとなった。しかし平田会長
 のご配慮を受けて、塾生からの質問事項をまとめて提出したこと
 に対して、返答をしていただくことになったが、残念ながらその
 途中に亡くなられてしまった。
 平田会長が最後に思考を巡らされたことの一つとして、共育塾
 5期生への返答があったことを、共育ネットワークメンバーには、
 今後も記憶に留めておいてほしいと願っている。

共育塾第1期生と



共育塾第4期生と
 ここ2年ほど強く感じて始めていたことだが、平田会長から薫陶を受けた「ものの考え方
 とチャレンジ精神」が、私自身の脱サラ後の活動に大きく影響を与えていたことを意識
 するようになってきた。私がいつも起業家セミナーなどで話をする「長年の仕事人生で
 大切に思っている3つのこと」は、平田会長が今からの若手経営者に伝えたかった
 ことではないかとも思っている。
 その3つのこととは、
 @人は無限の可能性を秘めている。それを阻害するのは自分自身である。
 A人生は人とのご縁で大きく変わる。よき出会いを大切に。
 B夢実現に向けて繰り返し思いを深める。ブラッシュアップの重要性を認識しよう。
 
 そして、これらを集約した言葉が「ないものを創る能力」と考えている。
   情報革命が進展していく中で、日本だけでなく世界的に、今までの仕組みが機能しなくなってきており、
 新たなパラダイムシフトが始まりつつある今、「ないものを創る能力」が重要となってきており、今こそ
 平田会長のアントレプレナーシップを伝えていく必要性を感じている。
 平田会長のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 合掌!