■小野田寛郎さん
  3月31日の熊日新聞を流し読みしている時に、百人百話に目が留まった。というのも
 久しぶりに元陸軍少尉の小野田寛郎氏の話が掲載されていたからである。
 陸軍中野学校で秘密戦の訓練を受け、1944年にフィリッピン戦線に送り込まれ
 1945年8月に終戦したことも分からず、1974年までの30年間ルパング島に潜伏し
 たあと日本に帰還した。その後結婚して75年からブラジルに移住して牧場を開拓して
 いることまでは知っていたが、まだ健在であることや84年から「小野田自然塾」を開校
 して、福島県塙町の施設で子供に自然との共生を教えているとのことも初めて知った。
小野田自然塾
   30年間をジャングルの中で、常に戦闘状態で生活し、帰還時も日本刀を手渡し区切り
をつけた場面や報告を行う場面では、日本の武士道精神が身体から溢れ出るようだった
ことを、今でも鮮やかに覚えている。
1922年生まれなので、現在は90歳を迎えるわけだが、馬にまたがっている掲載写真を
見ると、歳をとり柔和な表情になっているものの、背筋はピンとしており、悟りを啓いた
雰囲気を漂わせているのに感動した。
記事の内容を読むうちに、どんどん引き込まれていったが、今の世の中の問題を鋭く
指摘していることにも改めて驚かされた。
  新聞記事の内容転記であるが、例えば、
 島では戦友を失った後の最後の1年間が本当に辛かった。人間は仲間がいなければ生きられない。
 
ところが、日本人は敗戦後、集団は個人を束縛するものだと間違って思い込んだ。今回の震災でやっと
 「人は一人では生きられない」ということに気づき、絆の大切さを思い知ったと思います。
   いつ死ぬか分かりませんが、これからもできるだけ多くの子供に出会い、体が動かなくなる
 まで自然の怖さや強く生きる大切さを教えたい。
 人間は強くならないと優しくできないんです。
 世界には泥棒をする悪い国もある。戦争の主な原因は食料や資源争いで、両方に「正義」が
 あります。地球の人口が増え続ける以上、戦争はなくならない。平和は無条件では得られ
 ない
ということを、子供の頃から教え、大人になって何か起きた時に、どう判断するか考え
 させなければならないと思います。
 地震や災害はいつ起きるか分からない。将来、突然戦争に巻き込まれるかもしれない。
 子供達を強くしないと、日本の将来はありません。
 大人になったら何になりたいかを子供のうちから決められれば、目標を持って動き
 出しますよ。大人は子供にそう思わせるよう、手伝いをしなければならないと思います。
   若者教育のあり方を真剣に考える際の「原点」のようなものを、小野田さんは我々に
伝えており、人として大切にしたいことを含めて、非常に共感することばかりであった。
この記事を読むことで、久しぶりに清清しい気持ちになり、若者向けのセミナー活動を
する際には、小野田さんの言葉を伝えていきたいと思っている。