■サービス業編A
  地方から都市部に攻め込み飛躍図る書店
本の売れ行きが年々低迷、中小書店の廃業が続くなど書店業界は厳しい局面にあるが、地方での地盤をテコに首都圏に大型店を開き、成功させている書店がある。富山県に多店舗展開してきた明文堂書店(富山市経堂、清水社長)がそれで、2004年7月に埼玉県河口市に書籍を核とする同県最大級の複合店舗「川口末本店」を開設し、軌道に乗せるなど、大都市での実績を背景に地方展開するパターンの逆を行く戦略として、注目を浴びている。
同書店は、創業が1945年。富山県内に10店舗を持ち、年商45億円と県内有数の書店として地盤を固めてきている。同書店が大きく伸びるきっかけとなったのは同県朝日町に86年に開いた「朝日店」。駐車場を備えた郊外店第1号で、ビデオ、CDのレンタルを備えた店舗としてスタートした。当時、ビデオレンタル店はあったが、CDもレンタルするのは、県内でこれが初とされた。以後、入善町、黒部市、富山市へと店を展開、97年には、書籍専門館「富山市新庄経堂店」を開いた。ここでは、カフェを併設、本を買ってすぐに読みたい人のニーズに対応したり、座って本を読みながら選べるよう店内にいすやソファを置くなどの工夫を凝らした。
同書店は、各店独自の個性的な顧客サービスを提供しているのが特色で、子供の読書ファンをひろげようと、月2回、スタッフが子供達に童話を聞かせる会を開いたりしている。また、作家のサイン会や朗読会も開いている。情報収集にも熱心で米国の大型書店の視察を行うなど早くから未来の店舗動向の把握に取り組んでいる。個性的なサービスの充実の一方で、大型店化、24時間営業化をはかるなど、市場の変化を取り込むにも大きな力を注いできた。
首都圏進出は、積極的な同書店の経営戦略の中でも、思い切った新戦略で、首都圏での大型店経営の中から、これまで得られなかった経営の教訓、ヒントを積極的に吸収、既存店の経営に反映させる一方、北陸地域への進出、大都市部の今後の展開などにつなげていく考えという。しかし、規模の拡大に伴って、競争も一層厳しくなってくるのも必至。商品力、温かい接客、清潔さの三つを完全に実現するのが目標の清水経営、いよいよ正念場を迎えようとしている。