■飲料・食料編A
 ユニークな商品で、おつまみ市場に新風
「これが失敗したら会社はなくなる」という瀬戸際の状況の中から、成功への道を歩んだ中小企業を検証するのは、経営のテキストでは得られない生きた教訓が横たわっている。そこにはオリジナルにこだわり、「絶対に売れる」という強い信念を持ち続ける経営者像が浮かび上がる。「もし駄目だったら後処理をああしよう、こうしよう」といったマイナス志向とは無縁の世界である。
食品加工業の壮関(栃木県矢板市)は、新規参入が簡単ではない「おつまみ市場」に参入、劇的な成功を収めた元気いっぱいの若い企業だ。1996年当時、乾き物が主流だったおつまみ市場に生タイプの「茎わかめ」を投入し、定番商品に育てあげた。現在の国内シェアは何と90%にも上る。スーパーやコンビニに並ぶ大手メーカーの茎わかめ商品の中身は、ほとんどが同社の製造になるもので、いわゆるOEM(相手先ブランド)による製造が同社の主力となっている。
関雅樹社長は「食感がよく、おいしく、体に良いのに売れないはずがない。必ず売れるという確信があった」と発売当時を振り返る。ただ道のりは険しかった。スーパーに売り込んでも返事は「考えておく」だけ。変化が起きたのは地方スーパーの売り場で「リピーターが増え、数は少ないが安定して売れ続けた。やっと手ごたえをつかんだ」と同社長は語る。人気に火がついたのはその3年後、コンビニで扱うようになってからだ。

当時2億円足らずだった年間売り上げは2007年には27億円に急伸。浮き沈みが激しい食品業界で定番商品を育て上げた強みがはっきりと表れている。
原材料費高など食品業界を取り巻く環境は厳しいが、関社長にひるむ様子は微塵も見られない。それどころか「アゲンストの風はフォローの風となって吹く。正面から新たな戦略を練っていく」と意気盛んだ。商品陣容は、「種抜き干し梅」「おつまみめかぶ」「種抜きカリカリ梅」と次第に広がっている。
商品の味付けの決め手は、関社長の「舌」。自ら調味料の調合を細かく指示し、試作品の一つ一つを味見する。自らを信じて追求する姿はまさにベンチャースピリッツそのもの。こうした企業家魂が商品を通じて「誰かが喜ぶ、体にいい、素材自体を生かす」ということを消費者に訴えかける。しかも「他社と同じことはしない」−そのユニークさが同社の持ち味だ。これが社員一人ひとりの理念と行動として花開いている姿は、まさに起業のモデルケースといえる。