■衆議院選挙結果に思う
 8月30日に行われた衆議院議員選挙の結果は、予測されていたものではあるが、自民党は300議席から119議席に激減し惨敗を喫し、民主党は115議席から308議席という想定外の議席数を獲得し圧勝してしまった。
社民党と国民新党との連立を組むことも決まり、国防や教育問題を抱えながらも、民主党は政権与党として船出することとなった。
 独裁的リーダーの出現、または革命的政権交代によってしか、政治変革はできないと私は思っている。今回の選挙では後者の現象が発生したと捉えたい。私は、自民党の1党支配が終わったことで、長年溜まってきたゴミやアカを一掃するという、日本にとって再生に必要なきっかけができたと考えている。
 自民党凋落の原因は、長期政権による驕りと感覚麻痺を国民が肌で感じ取り、総理大臣を含む内閣の大臣の言動にあきれてしまうとともに、結局は「自民党では何も変わらない、何も変えることができない。」という失望感に繋がったためと考える。
自民党政権に限らず、長期的に同じ権力体制が率いる集団は、マンネリ化が進行し、初期のフレッシュな感覚がいつの間にか忘れ去られ、どうしても利権や不正の温床が広がることは、致仕方ないことかもしれない。ということは、やはり政治の世界では、政権交代が可能な2大政党制が望ましいわけである。
 今の日本国行政組織を企業経営組織に置き換えて考えてみると、いろいろ分かりやすいかもしれない。
1年ごとに社長交代する企業は、どのようになっていくことが想定されるか?
幹部社員の人事に関与できない社長・役員が経営をやったらどうなるか?
能力のない社長・役員で構成される企業はどうなるか?
ビジョンを示せない企業トップの会社は、どうなっていくか?

部下が作成する経営判断資料が、「誰が作成して、誰が決裁した書類なのか」わからない。(責任不在)
我々、一般社会人の常識から考えても、間違いなく行き詰ることは、自明の理である。

国会議事堂

   霞ヶ関官庁街
 
 企業がある程度の規模になると、ライン組織だけでは全体を見通すことが難しく、ライン&スタッフ組織や事業部制などをひくことになる。日本国はまさにライン&スタッフ組織をひいていることになるが、経営陣が内閣であり、スタッフが官僚、企業や国民がラインといえるかもしれない。都道府県や市町村はスタッフの末端である。また道州制の時代になった場合は、事業部制をひくということかもしれない。
 この体制で注意すべき点は、「スタッフの力が強くなりすぎないこと」といわれている。日本は自民党のマンネリ化が進むにつれて、適材適所ではない大臣のたらい回し人事により、大臣の質の劣化と力量不足が顕在化して、それを補うべくスタッフである官僚の力が増してしまったことが、現在の悲劇に繋がっている。結果として、膨大なスタッフを抱えた企業になってしまっているわけである。
  
 日本国憲法第65条に「行政権は内閣に属する」と規定されているが、新聞報道などから推察すると、実際は裏で官僚が行政権を牛耳っているようである。内閣とは霞ヶ関の官僚たちではなく、内閣総理大臣と国務大臣の集合体であり、国と国民の命運を左右する人が大臣なのである。大臣は官僚に目標を与え、彼等をリードする立場の人である。しかし、自民党政権の「内閣を組織し、政府組織を切り盛りする能力の劣化」が官僚主導の根源にあることも否めない。
少し前の女性法務大臣の答弁や言動は、とても適材適所とは誰がみても思えない状態であったが、象徴的な現象であった。
   この官僚支配を打破するには、新聞などでも「担当大臣は見識と力量を備える人材を充てる」「少なくとも4年間は同じ大臣が担当」「官僚の人事権は内閣が持つ」「族議員、官僚、大企業のもたれあい構造の打破」などがいわれている。
しかし最終的には、組織は人が動かすもので、どんな組織を作っても、それを動かす人で大きく変質することになる。志の高い国会議員、官僚、大企業トップが日本国の主流になっていくことが望まれる。
 鳩山民主党首が、志高く、民意に媚びることなく、右顧左眄しない人であってほしいし、この政権交代が新たな国づくりのきっかけになることを期待したい。