●ガラガラ船
日本の最西南端・鹿児島県南さつま市にある坊津は東シナ海を行きかう船舶の寄港地として栄えた港町です。 この町に伝わる船形の郷土玩具が「ガラガラ船』ユニ-クな名前は、子供たちが引く際にガラガラと音が鳴ることから名付けられたと言われています。
端午の節句には鯉のぼりが一般的ですが、港町である坊津では暮らしにおいて重要で身近な存在だった「船」の形をした玩具が伝えられてきたそうです。
ガラガラ船は全長60㎝ほどで、昔の木造船をモチ-フとしています。船体に4つの車輪が付けられ、先端には大漁を祝う船飾り、華やかな帆に、
帆網にはサイノコと呼ばれる水夫をかたどった人形が吊るされています。
「昔は各家庭で父親や祖父が船体を、母親や祖母が帆やサイノコを作り、帆には、子どもの晴れ着やお母さんの着物の古着を使うことが多く、今よりもっと素朴だったようです。」(坊津ガラガラ船・唐カラ船保存会の会長・谷川茂洋さん談)「最近は作れる人が少ないので、作って欲しいと頼まれるんだけど、西陣織、金糸を使った帆がいいと言われるね。やっぱり親心だね」(保存会の織 田聖さん談)家ごとに伝わる船体のデザインがあり、作り手の個性や工夫が見られるのもガラガラ船の魅力。

色とりどりのガラガラ船が勢揃いするのが、毎年5月5日に泊地区で行われる「唐カラ船祭り」 新聞紙で作った兜をかぶった浴衣姿の男の子たちが、ガラガラ船を引きながら九玉神社まで練り歩き、神事の後には浜辺で一斉にレ-スを行います。 自分の背丈ほどのガラガラ船を引きながら走る姿は愛らしく、地元住民だけでなく県外からも多くの人が見に訪れるのだそうです。 子どもたちが、すくすくと育つようにと思いを込めて作られてきたガラガラ船。きっと未来でも、美しい坊津の浜辺には子供たちの声とともに「がらがら」と元気な声が響き渡っている 事でしょう。
                      喜びのタネまき新聞より