■ビジネス支援図書館レポートC
5.フォーラムでの基調講演

 先ずは竹内電通大特任教授の基調講演から始まり、「中小企業を支援する図書館:図書館で聞いてみました」のテーマでの話があった。
 21世紀は知識基盤社会であり、キャッチアップ経営での成功モデルからフロントランナー経営での成功モデルに切替える必要がある。今は地域産業の中核である中小企業の活性化が必要で、企業イノベーションを図ると共に、自立型中小企業への転換が望まれる状況にある。そのためには、「自社の強みがオンリーワン、ナンバーワンに育つ可能性があるか、市場規模は充分か、市場が生まれる可能性があるか」などを検討していくことが大切である。それらを具体化していくには、新連携・異業種交流、産学官連携、業界事例研究などを行い、「自社の強みづくり」を推進していくことが大切である。
ビジネス支援図書館は、地域中小企業の知識基盤社会への対応を支援する機関として、大いに活用すべきである。また図書館サイドも、それをサポートできる支援体制を充実していってほしい。
そして図書館のレファレンスサービスを有効活用したビジネス支援事例の紹介が4件ほどあった。それに加えて中国の実力を知るために、100円ショップ向け商品調達のメッカである義烏市場と製造工場調査の事例を多くの写真を使って紹介があったが、その規模と内容には目を見張るものがあった。

電通大・竹内特任教授 基調講演

泣Rンフェッティ 岩永社長 事例発表
6.フォーラムでの起業事例発表とパネルディスカッション

 基調講演に次いで農業、通販、医療と幅広い起業家3人に来てもらい、それぞれの事例発表をしてもらった。笈「蘇デザインファーム(農業法人で、自然循環型農業と食育・環境教育を事業化)の佐伯明香社長、泣Rンフェッティ(ウェディングアイテムドットコムのサイトでブライダルグッズの通販事業)の岩永圭一社長、潟純Cズリーディング(医師が起業した遠隔画像診断事業)の中山善晴社長の3人から、それぞれが15分の発表を行った。それぞれが「起業家のプロフィール、会社概要、企業のプロセス、図書情報・相談会の活用状況、将来の夢」などについて、熱く語ってくれた。
それに引き続き、「図書館におけるビジネス支援の現状と可能性」というテーマでのパネルディスカッションが開催された。私がコーディネーターをやらせていただき、パネラーとしては上述の竹内先生、3人の起業家に加えて、地域診断士研究会の坂本純夫代表、図書館司書の平洋子主幹の6名で行われた。
 パネラーの紹介に始まり、それぞれの立場からの要望や提案等を討議する中で、竹内先生から海外も含めた他地域での事例紹介なども交えて活発な意見交換がなされ、その後、現在の課題や今後に展開したいことなども意見交換し、充実した80分となった。診断士と司書の役割、レファレンスサービスの基本は「聞くこと」であること、レフェラルサービス(他機関の紹介)の積極的展開、コミュニケーションの場、起業家の交流の場づくりなど、図書館サービスの向上に繋がる多くの意見交換ができたと思っている。
自己責任が問われる自立化社会の中での情報収集拠点として、今からの世の中で、土・日開館している図書館の役割の大きさを気付かせられた。
7.さいごに

 フォーラム修了後の図書館関係者からの意見を書いておくこととする。
今回のフォーラムを通じて、ビジネス支援図書館としての課題を認識することができ、今後、さらに地域や関連機関とのネットワークづくりを進めて、地域や住民の課題解決に役立つビジネス支援図書館として県内図書館のモデルとなるように取り組んでいきたい。
 竹内先生から「実際のレファレンスにおいては、相談者は模擬レファレンスのように、分かりやすく質問することはないので、逆に司書が上手く聞くことで相談者が捜したい情報を把握することが重要である」旨の話があり、非常に納得させられた。
一番感じたのは、図書館の職員が起業家の方や関連する施設(県や市町村の商工、農林水産等、商工会等)と連携をとることで、様々な情報を幅広く収集し、利用者に提供できる体制を整えることが重要だと感じた。

           <「ビジネス支援図書館フォーラムinくまもと」の開催要領>

     1 日時 平成20年11月30日(日) 午後1時から午後4時40分まで
     2 場所 熊本県立図書館3階大研修室
     3 対象
          起業(創業)・経営改善に関心がある一般県民
          市町村関係職員、市町立図書館職員、大学図書館職員等
          県商工・農林水産行政機関職員・県商工・農林水産関係団体職員
     4 主催 熊本県立図書館
     5 共催 熊本県図書館連絡協議会、熊本県図書館活動振興協議会
     6 後援 地域診断士研究会
     7 内容
       (1) 13:00〜13:10 開会行事(阿南館長挨拶)
       (2) 13:10〜14:10 基調講演
            「中小企業を支援する図書館」
             国立大学法人 電気通信大学教授 竹内利明氏
              (ビジネス支援図書館推進協議会長)
       (3) 14:20〜15:05 起業家による起業事例発表
            ○含イズ・リーディング  社長 中山善晴氏(地域密着の遠隔画像診断事業)
            ○泣Rンフェッティ  社長 岩永圭一氏(ブライダルグッズの通販事業)
            ○笈「蘇デザインファーム  社長 佐伯明香氏(自然農業・食育事業)
       (4) 15:15〜16:40 パネルディスカッション
            (テーマ)「図書館におけるビジネス支援の現状と可能性」
            ○コーディネーター:横山 耕二氏(オフィスチェイカス代表) 
            ○パネラー   :竹内 利明氏(電気通信大学教授)
                      :坂本 純夫氏(中小企業診断士)
                      :中山 善晴氏((株)ワイズ・リーディング社長)
                      :岩永 圭一氏((有)コンフェッティ社長)
                      :佐伯 明香氏((有)阿蘇デザインファーム社長)
                      :平  洋子氏(熊本県立図書館主幹・司書)