■人は無限の可能性を秘めている@

 「人を活かす」という言葉が平田機工の経営理念の筆頭に書かれているが、私が平田機工に勤めていたときに、平田会長から「人を活かす」の話に関して、「人は皆、無限の可能性を秘めている。」という言葉も、何度となく聞いてきた。サラリーマン時代にはこの言葉を表面的に捉えていただけで、その重要性や奥深さについて全く気付いていなかった。
 あることを機に、「どうせ一度しかない自分の人生、精一杯生き切るようにして、死ぬときに悔いを残さないようにしたい。」と考えるようになり、49歳11ヶ月で脱サラすることにした。それ以降は、全くのゼロからスタートをして横山耕二業づくりを行ってきたことになるが、その間に自身の経験の中で、「無限の可能性」について実感する機会がいくつも重なっていくにつれ、この言葉の普遍的な本質が腑に落ちるようになっていった。そうなってから過去を振り返ってみると、実は若い頃からこの言葉が当てはまることを経験していたことも改めて気付いた次第である。
 
この言葉が腑に落ちたときから、今まで自分が感じていた世界が大きく変わっていったことを憶えている。どういうことかというと、今まで別世界の人と考えていた人が、実は我々自身の可能性の延長線上にあると考えるようになれたことである。天性の才能以上に、「心底からの思い」や「たゆまぬ努力」「右顧左眄しない信念」のほうが自分自身の変化・成長・発展への影響力が大きいと考えるようになった。各自の「やりがい」は、自己向上心(よくなりたい心)と社会貢献意欲(お役立ちの心)から生じるとも考えるようにもなった。
 例えば実業界では松下幸之助、稲盛和夫、スポーツ界では王貞治、イチローなどは、自分と別世界の人ではなく我々が学ぶこともたくさんあり、心がけ次第で、彼等の域にも近づくことができると心から思うようになった。「あの人は特別だから」と考えた途端、その人から学び変化していく可能性はゼロであるが、「自分にも可能性がある」と本気で思うことで、どれだけでも実現の可能性が広がっていくということが事実である。

 天職という言葉があるが、まさに神から授けられた現世で修業する場(職業)のことである。人は生まれてきたときに神から使命を与えられており、それに出会い、実現に向けてやっていくことができれば、本来持っている力を発揮できると思う。小さいときに天職に出会う人もいれば、種々の経験をしていく中で出会う人、死ぬまでに出会わない人もいるのではないだろうか。みんなが多くの経験をして生きていく中で、天職に出会い、縁を見出したり見過ごしたりしているのかもしれない。 
 イチローやタイガーウッズなどは小さいときに天職と出会い、天才として大活躍をしており、ジャンボ尾崎やジャイアント馬場は野球で挫折したあとゴルフやプロレスの世界で大活躍をし、日清食品の安藤百福は何回も事業で挫折を繰り返した後、50歳の頃にカップラーメンで大成功を収めたわけである。
 私は技術者として仕事を始め、2つの企業での管理者の経験を積んで脱サラし、中小企業診断士の資格を取得し、幅広い経験を積んでいく中で、自分なりの天職が、ようやく見え始めたように感じている。「ないものを創る・表現する、共に学び・育てる」がキーワードのようである。

 
 地域診断士研究会のメンバーや、共育塾の塾生には、「あなた方の考え方次第で、あなた方の可能性は無限に広がる」とのことを話しているが、あまりかけ離れたことを話しても、実感してもらえないので、私自身の無限の可能性を感じた事例を伝え、各人で自分の過去の経験から同様なことを思い起こしてもらい、気付きに繋げてもらうようにしている。自分自身が自分の可能性に制約をつくり、本当はできる可能性がある芽を摘んでいることを自覚してほしいと思っている。
 次回に、自分自身の経験事例を書くこととする。