■ブラッシュアップの効用 |
共育塾でゲストとの会食懇談に、平田機工の平田会長や元三井物産九州支社長だった星崎さんなど、「ないものを創り上げてきた人たち」に来ていただいているが、塾生への共通する伝えたいこととして、「繰り返し、思いを深める」ことの重要性を力説されている。それ以外でも、トヨタ生産方式の産みの親である大野耐一氏やセブンイレブンの鈴木敏文氏、スポーツ界でいうとイチローなども、全く同じことを話している。「マネジメント・サイクル(PDCA)」も「コンティンジェンシー・プラニング」「イメージ・トレーニング」も、また京セラの稲盛和夫氏のいう「祈りにも似た気持ち」「継続は力なり」も同じ思想の範疇に入ると思っている。 |
私自身も、ここ十数年の経験の中から、「繰り返し、思いを深める」ことの重要性を実感しており、地域診断士研究会メンバーや共育塾生に対して、「ブラッシュアップの重要性」という言葉で、繰り返し伝えるように心がけている。 ブラッシュアップとは、「繰り返し、繰り返し、よくすること」であり、本質に近づき、本質に迫る唯一の方法ではないかと思っている。 塾生には、身近にある具体事例を通してみんなに伝えることにしている。ここに、その中の2つの事例を紹介しておく。 |
@「計画を立てること」と「絵を描くこと」の違い 私は多くの経営者や企業家と接触する機会が多くあり、その際に用意されているビジネスプランを通して、何処までブラッシュアップされているかを、ビジネスプランの熟度として評価している。 計画を立ててもその通りに行くことは殆どないといっても過言ではないが、うまくいかなかった場合のケースを捉えて、いくつかの質問を行うことで、そのプランの熟度を簡単に判断できる。ブラッシュアップを相当している場合は、多くの「その場合は、こうしようと考えています。」と少しの「そこのところが、いいアイデアが出てこない中の一つです。」のような話になる。ブラッシュアップが殆どされていない場合は、「そのことは考えていませんでした。」「そんなことにはならないはずです。」のような話が大部分になり、わたしは「これはビジネスプランではなく、単なる絵に過ぎないと思います。」と話すようにしている。 |
A起業家の初プレゼンテーションと複数回の経験後のプレゼンテーション 成功に向かっている起業家を多く支援してきているが、彼等の最初の頃のプレゼンテーションは「話し方も未熟で、ストーリーも、アピール点もうまく表現できていない」ケースが殆どである。ところが事業可能性が高い場合は、プレゼンテーションの場を多く踏んでいくことになる。プレゼンテーションのたびに、自分自身の反省点や周囲からの各種助言等が、繰り返し、繰り返し盛り込まれていくことで、1年後、2年後には、信じられないほどの変化をしていくことを数多く見てきた。プレゼンテーション資料も素晴らしいものとなり、プレゼンテーションも自信に溢れて、思いも深まりアピール力もあるものに変化していくことになる。 |
起業家は非常に忙しい状況にあるために、「ブラッシュアップ」に時間を使うことを好まない傾向にあるが、そのことが事業の成功確率を下げる結果に繋がることも理解しておく必要があると考えている。今の世の中が効率性の追求に向かいすぎたために、「思いを深める」ための時間やエネルギーを無駄と考えるようであれば、目的達成に向かっていくことを阻害することとなり、非常に残念なことである。 最後に、ブラッシュアップを通して得られる効用を5項目上げておく。 @整理能力の向上 :ものの考え方の整理能力が大幅に向上する Aヒラメキ力の向上:繰り返し、繰り返し行うことで、ヒラメキ力も醸成される B自信が深まる :未経験なことでも、あたかも既経験と感じるようになる C思いの深まり :繰り返し、繰り返しの中で、潜在脳に刷り込まれる D本質追求力の向上:思考のエキスに近づくことで、本質的で熟成されたものに発展する |