■ビジネス支援図書館と起業・経営相談会@

   月日の経つのは早いもので、熊本県立図書館で「ビジネス情報コーナー」を設置して「ビジネス支援
 図書館」と称されるようになって3年になる。ビジネス支援図書館は、地域の図書館が持つ豊富な情報の
 蓄積と、司書によるレファレンスをもとに、創業者や経営者へ情報の橋渡しの役割を担うことで、地域に
 おける開業活動や中小企業経営等を支援するものである。2001年度にビジネス支援に取り組む
 図書館は全国で4館に過ぎなかったが、2004年度には29館(都道府県立は10館)、2006年度には
 121館(都道府県立は21館)を超えるに至っており、ほかに取組を検討中の図書館も多く、着実な広まりを
 見せている。  
   九州では一昨年段階で北九州市立図書館、福岡県立図書館、諫早市立図書館
 熊本県立図書館、宮崎県立図書館、鹿児島県立奄美大島分館の6館が既にビジネス
 支援に取り組んでおり、福岡市立総合図書館が検討中となっていた。熊本では、新幹
 線開通に向けて進んでいる駅前開発の中で、熊本市が建設するビルの目玉として、
 仮称・図書情報センター構想の検討が進んでいる状況にもある。
 
 支援に向けた取組は図書館により様々だが、代表的な機能としては、〔1〕図書館としての
公共性を活かして大量に蓄積した幅広い分野のビジネスに役立つ文献・雑誌等紙媒体の
情報を、ビジネスをキーワードに集め一覧できるようにして提供したり、インターネットやデータ
ベースといった電子媒体を無料で提供していることや、〔2〕必要な情報へどのようにアクセス
すればよいか分からなくとも、情報収集のノウハウを持つ司書によるレファレンスサービスを
受けることができること、〔3〕平日のみならず土日も開館しているため、フルタイムの仕事を
持つ者にも利用しやすく、無料であることと併せて、誰にとっても敷居が低く利用しやすい公共
施設であること、〔4〕図書館によっては行政や商工会議所、大学等専門的なノウハウと機能
を持つ機関と連携を図っており、情報へのワンストップ的なアクセス窓口となっていること、
〔5〕開業セミナー等の開催による情報発信を挙げることができる。
  
  熊本県立図書館でも、「ビジネス情報コーナー」の拡充を図るとともに、上記内容に関する機能拡充を
 図りながら、金をかけない地道な工夫を施してきた。そういう中で昨年初めに私のほうで県立図書館に
 出向き、村山館長にお会いして「起業・経営相談会の共催」の提案を行った結果、館長には非常に興味を
 持っていただいた。それを受けて、熊本県立図書館と地域診断士研究会との前向きの共同検討が始まり
 試行錯誤の議論も交わしながら相互理解が深まり、昨年5月から地域診断士研究会との共催で、中小
 企業診断士による無料の起業・経営相談会を始めている。
 http://www.library.pref.kumamoto.jp/onchikan/bussiness-sudan-new.pdf
  
  地域診断士研究会とは、国家資格(経済産業大臣認定)を有する経営コンサルタントで
 ある中小企業診断士の集団である。メンバーは8名おり、将来独立を考えている企業勤めの
 診断士と、独立後間もない診断士で構成し、「力量向上と地域社会貢献を志す勉強会」を
 行っている。その中の6名が相談員として活動しており、昨年5月から月2回(第2、第4
 日曜日)相談員2名体制での起業・経営相談会を行なってきた。
 5月から12月までの8ヶ月間での相談件数が48件(起業相談33件、経営相談15件)と
 なっているが、その間での特徴的な相談事例を2件採り上げて、次回に紹介することとする。