■ビジネス支援図書館と中小企業施策

  ビジネス支援図書館推進協議会が発足したのが、2000年12月とのことであるので、既に6年が
 経過している。私が当会の会員になってからでも3年目を迎えている。
  
   ビジネス支援図書館と称される図書館は、昨年10月段階
 で、日本全国に34館、準備中が10館あったので、現在では
 既に40館は越えているのではないかと思われる。九州では
 北九州市立図書館、福岡県立図書館、諫早市立図書館、
 熊本県立図書館、宮崎県立図書館、鹿児島県立奄美大島
 分館の6館が既にビジネス支援に取り組んでおり、福岡市立
 総合図書館が検討中となっていた。熊本では、当会の初代
 会長である電気通信大学の竹内客員教授のご尽力も受けて
 昨年2月に熊本県立図書館にビジネス支援コーナーが設置さ
 れた。また、新幹線開通に向けて進んでいる駅前開発の中で、
 熊本市が建設するビルの目玉として、仮称・図書情報センター
 構想の検討が進んでいる状況にもある。

  前述のようにビジネス支援図書館活動は6年目を迎えているが、今までは文部科学省
 単独でのビジネス支援図書館推進策が図られてきた。しかし2004年頃からは、竹内
 特任教授の繰り返しの働きかけに呼応して、中小企業庁でビジネス支援図書館の
 側面支援を行う方向で検討が進んできており、経済産業行政の中でも具体化がされ
 始めている。文部科学省と経済産業省の縦割り行政の弊害が、少しづつ解消されてきて
 いることを嬉しく思っている。
  
  現在検討中の中企庁の関連施策は、「司書のビジネス情報対応力の教育」「利用者への相談対応サー
 ビスの実施」が基軸になっていると聞いたことがある。
 具体的には、今年の10月からはモデル事業が開始されており、東京都立中央図書館と新宿区中央
 図書館、分館の立角筈図書館の3館で、中小企業診断士を活用した起業・経営革新の相談会を行う
 ようになった。 (下記URL参照)
 http://www.library.shinjuku.tokyo.jp/keijiban/tirasi/bijinesusoudan.htm
 モデル事業がうまくいった場合は、次年度に本格施策に盛り込まれることになり、地域にも展開されるので
 非常に楽しみである。

  また、中小企業白書にもビジネス支援図書館について記載されるようになってきたが、
 中小企業白書2006年版に掲載されたコラム「ビジネス支援図書館の活動」
 (P41コラム1-2-1)を以下に全文紹介 しておく。
    
  開業を準備する者や、開業間もない企業の経営者にとっては、ビジネスモデルに関するアイデアや、実行
 に移すための知識、経営管理上のノウハウといった情報を、限られたネットワークやソースの中でどの
 ように入手するかが重要な問題である。この点、「ビジネス支援図書館」と呼ばれる、公共図書館による
 ビジネス支援活動が注目を浴びている。

  これは、地域の図書館が持つ豊富な情報の蓄積と、司書によるレファレンスをもとに、創業者や経営者
 へ情報の橋渡しの役割を担うことで、地域における開業活動や中小企業経営等を支援するものである。
 2001年度にビジネス支援に取り組む図書館は全国で4館に過ぎなかったが、2005年7月には30館を
 超えるに至っており※、取組を検討中の図書館も多く、着実な広まりを見せている。

  支援に向けた取組は図書館により様々だが、代表的な機能としては、〔1〕図書館としての公共性を活か
 して大量に蓄積した幅広い分野のビジネスに役立つ文献・雑誌等紙媒体の情報を、ビジネスをキーワード
 に集め一覧できるようにして提供したり、インターネットやデータベースといった電子媒体を無料で提供して
 いることや、〔2〕必要な情報へどのようにアクセスすればよいか分からなくとも、情報収集のノウハウを
 持つ司書によるレファレンスサービスを受けることができること、〔3〕平日のみならず土日も開館している
 ため、フルタイムの仕事を持つ者にも利用しやすく、無料であることと併せて、誰にとっても敷居が低く利用
 しやすい公共施設であること、〔4〕図書館によっては行政や商工会議所、大学等専門的なノウハウと機能
 を持つ機関と連携を図っており、情報へのワンストップ的なアクセス窓口となっていること、〔5〕開業セミナー
 等の開催による情報発信を挙げることができる。

  具体例として品川区立大崎図書館の活動を見ると、モノ作りに関する情報を中心に、4,000冊以上の
 専門書やビジネス書、8種のオンラインデータベース、約80誌のビジネス雑誌・新聞を取り揃えるほか、
 品川区産業振興課からのコーディネータの派遣や、NPOによるよろず相談会、経営者や技術者同士の
 交流会の開催等外部機関との連携を実施しており、知識やノウハウを有する協力者の参画を受けることで
 ニーズに合った情報や奥行きのある支援を提供している。
  ビジネス支援に取り組む図書館の広がりとともに、このような地域に密着した取組を通じて、開業活動
 の活性化や、開業間もない企業の生存率の向上につながることが大いに期待される。
 ※ビジネス支援図書館推進協議会調べ