■JANBO・上海BI事情視察団A
 
 前回は最近の上海事情に関して述べたので、今回は上海のビジネス・インキュベーション事情について述べてみる。

 1992年に国営企業の改革や公務員の市場放出・民営化の促進がスタートしたわけだが、これが転換点として今の中国がある。しかし資本主義経済に対応を始めてからの歴史はまだ浅く、経営管理人材の不足が深刻であり、最も強化する必要のある事項となっている。中国でのインキュベーション施策は、創業支援策というよりも産業振興策といったほうがフィットする感じである。社員300人の企業も入居している。
 中国のビジネス・インキュベーション事情としての特徴が3つある。先ず大学進学者の急増による就職難があること、次に中国国民の特性として元々から独立志向が強くあること、そして国策としての創業支援に力が入っていることが3番目としてある。具体的には学生への起業家教育の推進と、学生創業に対する助成金制度が昨年よりスタートしており、アンケートでは大学生の50%が創業意欲ありとの結果となっている。

 今回訪問したインキュベータは3箇所で、「上海市科学技術創業センター」「上海慧谷高科創業中心」「上海楊浦科技創業中心」である。
 *上海市科学技術創業センター(STIC) :復旦大学、上海市、楊浦区が出資をし、設立20年と最も古くからある上海市のインキュベータの総元締である。王栄主任は上海市科学技術委員会の責任者で、国内外でも有名な人のようである。韓明遠氏は副主任で科技創業有限公司(個人の投資会社)の総経理も兼務している。上海市には35のインキュベータがあり2000社を有している。そのうちの15のインキュベータには上海市科学技術委員会が出資している。STICのインキュベータには75社が入居している。

上海市科技創業中心

上海慧谷高科創業中心
* 上海慧谷高科創業中心 :1999年に設立された紡績工場跡地を使ったインキュベータ(134社/3000人の)で、銭主任が責任者となっている。銭主任は上海交通大学教授も兼務しており、上海市科学技術委員会のナンバー2でもある。当インキュベータはIT関係のインキュベータであり、入居企業の売上は年間7.6億元あるとのこと。
*上海楊浦科技創業中心 :1997年に復旦大学科学技術園区に設立された大学連携型のインキュベータである。当初は他のインキュベータと同様に公的インキュベータであったが、謝総経理が2001年に上海楊浦科技有限公司(不動産・投資会社)を作り、2005年に当インキュベータと統合し民間経営へもってきたユニークなところである。その後、民間資金でインキュベータを増設し、謝氏は「公務員→民間→インキュベータ経営」の経歴で、資本主義経済をよく理解しており、公的機関を民営化した。現段階では不動産売買が最大の収入源であり、家賃収入は総収入の2割くらいで、そのほか補助サービス(レストラン等)の収入で昨年度より利益を出している。今後は入居企業への投資を薦めていく中で最大の収入源(キャピタルゲイン)に持っていくつもりである。
 上海楊浦科技創業中心
 最後に上海の象徴的な「旧の豫園」と「新のリニアモーターカー」の写真を掲載しておくこととする。
 豫園は旧・上海城内にある明の時代に造られた中国式庭園で、大小たくさんの楼閣が建ち並び、池や石山や橋など、中国の古典庭園を楽しめるところである。また豫園の周辺には豫園商場があり、かつては城内の中心マーケットとして栄えていたそうで、いわば上海の下町である。 

豫園の入口

リニアモーターカー
 一方リニアモーターカーは、飛行場から市内への足として2002年12月に、現在の路線である浦東新区の龍陽路駅(地下鉄2号線)と浦東国際空港駅間の30キロが開通した。世界初の商用営業中の高速リニアモーターカーで最高時速は430Km/hが出る。私が乗ったときも432Km/hを記録したが、乗り心地は日本の新幹線より揺れが大きいように感じた。