■自立化社会へのインフラ整備A
 前回、自立化社会のインフラ整備として『若年者の自立人材育成機能の充実』と『自己責任時代の必要情報提供機能の充実』の二つの機能の重要性に触れたわけであるが、これを「BIS(ビジネス・インキュベーション・システム)づくり」に絞って考えてみると、右図のような構造で考えることができる。
自立化社会における現在のビジネス支援推進施策の柱の一つとして『ビジネス・インキュベーション・システムの推進』があるが、それに付随する2つの機能として『ベンチャーキッズスクール等の自立化人材教育の推進』と『ビジネス支援図書館づくりの推進』があることになる。
 『ビジネス・インキュベーション・システムの推進』
「学校は出たものの、望むべく勤め口がない」、「大企業にリストラされる一方、中小企業は受け皿にならない」という時代には、公的機関の創業支援施策は非常に大切な施策であり、国レベルではJANBO(新事業創出支援協議会:江崎玲於奈会長)が中心となってビジネス・インキュベーション・システムづくりが行われており、私もIMインストラクターとして参画している。県レベルでいうと、平成14年に県のインキュベーション施設「夢挑戦プラザ21」、平成15年に熊大のインキュベーション施設ができ、今年は熊本大学型バイオインキュベータや熊本市インキュベータができる予定もある。現状をベースにしたハード・ソフト支援施設は充実される方向にはある。しかし起業家精神が豊かな人材が比率的に少ない熊本など地方圏の実情からすると、長期的な施策としての『社会インフラの整備』を並行して進めていかないことには、起業家精神の豊かな人材を増やすことは難しいと考えている。

 『ベンチャーキッズスクール等の自立化人材教育の推進』
先ず「現在の小学6年生は、10年後の社会人である」との事実を踏まえて考えると、『若年者の自立人材育成機能の充実』は非常に大切なことである。早稲田大学大学院の大江建先生が、大学で起業家教育を行う中で、大学生になってからの教育では遅すぎることを実感され、そのときの大学院生であった平井さんを指導し、セルフウィングという若年者自立化教育事業を6年前に立ち上げた話を聞き、これに共感して4年前からセルフウィングとの連携づくりと熊本における人材発掘を行ってきた。素晴らしい人材を発掘できたこともあり、一昨年末にエデュケアデザインが発足し、熊本における自立化教育事業が立ち上がった次第である。エデュケアデザインという『若年者の自立人材育成機能の充実』の芽づくりができたところであり、今後セルフウィングと組んで、熊本から九州に発信すべく、エデュケアデザインの事業化や企画推進を支援しているところである。
 
 『ビジネス支援図書館づくりの推進』
「自己責任を取るべく、判断するための情報が得られない社会」との事実を踏まえて考えると、『自己責任時代の必要情報提供機能の充実』は非常に大切なことである。
電通大の竹内利明先生が創業・経営革新支援を行っていく中で、私より早く『ベンチャーキッズスクール等の自立化人材教育の推進』と『ビジネス支援図書館づくりの推進』の必要性を痛感され、前者に対しては多摩起業家育成フォーラムにおける活動を、後者に対してビジネス支援図書館推進協議会の会長をされている。
私は竹内さんとは4年前に経営革新支援法を通して中企庁の方からの紹介で知り合い、2年前にビジネス支援図書館づくりを推進されていることを知り、竹内さんのタッチされているそれぞれの活動に共感したために、熊本では話題になっていなかったビジネス支援図書館づくりを昨年半ばから啓発普及活動を推進するようになった。昨年後半には、竹内さんには熊本にも来ていただき、熊本県立図書館の佐藤館長はじめ多くの方々との意見交換の場を段取りした。結果的に、熊本県立図書館は佐藤館長の主導で近いうちにビジネス支援を始めることとなり、熊本市においても駅前開発ビルに図書情報センター(仮称)を目玉として設置する方向付けがなされている。
図書情報センターについては、今年度はビジネス支援図書館を含んだセンターづくりに向けての基本計画が策定されるところにきており、私も計画策定には側面協力していくことになる。