■自立化社会へのインフラ整備@
 「BIS(ビジネス・インキュベーション・システム)づくり」は、「自立化社会へのインフラ整備」の一断面の姿であると考えており、今回このテーマをIS考として採り上げることとした。 
 バブル崩壊後に「高度成長から低成長・マイナス成長へ」、「キャッチアップ・モデルからイノベーション・モデルへ」と変化が起きている中で、各人の意識改革の遅れもあるが、それ以上に新たな社会づくりのためのインフラの整備が全く進められていないために、日本社会の歪みがいろんなところで顕在化している現状がある。
 具体的な話をすると、「いい学校に入り、いい会社に勤め、定年を迎えて、年金で悠々自適の晩年を迎える」という図式は、とうの昔に幻と化している。逆に、「学校は出たものの、勤め口がない」や「大企業にリストラされ、中小企業は受け皿なし」、「年金も、どのくらいもらえるか分からない」というような時代になっている。今まさに自分の力で生きていく能力が、各人に求められる時代になっており、好きであろうがなかろうが自立化社会を迎えているといえるのではなかろうか。
このような社会の中で、必要とされるインフラとして二つの大切なことがあると考えている。『若年者の自立人材育成機能の充実』と『自己責任時代の必要情報提供機能の充実』である。

 『若年者の自立人材育成機能の充実』

子供の教育も「知識偏重教育」から「生きていく智恵の教育」の重要性が増しており、文部科学省、厚生労働省、経済産業省が協力してキャリア教育を重視する施策が打たれ始めている。
今からの時代は、自立社会の前提として「自己選択、自己決断、自己責任」即ち「自分で進む方向を考え、自分で決めて行動し、結果責任を自分で負う」ことのできる人材の教育が大切ということである。
そのためにはキャリア教育などが全ての若者に対して実施されるような社会インフラの整備が必要となる。即ち『若年者の自立人材育成機能の充実』が望まれる。
欧米では子供の家庭や学校教育も自立化教育に主点が置かれており、昔から社会インフラとして組み込まれてきているが、日本もそのようなことが必要不可欠な時代を迎えているといえる。

 『自己責任時代の必要情報提供機能の充実』

上意下達思考で長年成り立っていた日本社会において、政府自らが自己責任の時代と叫び始めており、銀行預金のペイオフやイラクの日本人人質事件の際も、自己責任という言葉が強調されてニュースにも大々的に採り上げられていた。しかし現実を振り返ると、自己責任を取るための判断材料(情報)を得ることがなかなか難しいいびつな社会環境にある。例えば医療過誤や法律問題などで、医師や弁護士に「これは・・・こうするしかない」と言われたら、それに従うしかないのが実情の社会である。
 そこで自己責任が強調される時代には、自己責任を問われるような問題に遭遇したときに、多面的に情報を収集・整理することを可能とする社会インフラが必要となる。
即ち『自己責任時代の必要情報提供機能の充実』が望まれる。欧米では、公共図書館がその役割を果たしレファレンスサービスも多様化しており、「医療対応」「法律対応」「ビジネス対応」「アート対応」などの支援を行うための情報生成・提供機能を果たしているようである。
このような多岐にわたるサービスを行なう図書館をハイブリッドライブラリーと称されることもある。

 次回はこのような社会インフラについてBISの観点から述べることとする。