■国際ビジネス・インキュベーション・シンポジウム

 11月12〜14日に、北九州市で「国際ベンチャー・インキュベーション・フェスタin北九州」が開催され、
  全世界から集まっての各種イベントが開催された。
   その中の「国際ビジネス・インキュベーション・シンポジウム」において
  13日には「地域のインキュベーション・システムと国際的なネットワークの構築について」という
  パネルディスカッションが行われ、私もパネラーの一員として参加させていただいたので、
  話し合いを通して感じた、各国間の実情差に関して簡単に述べてみることとする。
   アメリカと日本ではインキュベーション・マネージャー(以後はIMと記載)に関する考え方に
  違いがあるようである。
   アメリカでは、「インキュベータを事業として成り立たせるためにIMは有用であり、
  従ってインキュベータ・マネージャーと呼んでいる」ということで、
  日本では「起業家を支援・育成するためにIMが重要であり、
  従ってインキュベーション・マネージャーと呼んでいる」ということで、
  日本では施設なしのIMも存在することになる。
  また別の観点からいうと、アメリカの場合は「事業」に主点をおいた支援で、
  日本の場合は「起業家」に主点をおいた支援ということになるのかもしれない。
   また、IMについても、アメリカでは資金調達が最重点支援事項で、
  例えば資金調達のマネージャーなどと専門分化した分業化がされているようであり、
  各分野の専門家IMが連携するイメージではないかと考えられる。
  日本の場合は起業家を総合的・継続的に支援する中で、
  より突っ込んだ支援は専門家との連携でサポートするようなイメージではないかと思う。

   韓国ではインキュベータの7〜8割は、大学インキュベータとのことで、
  日本や米国とはだいぶ異なる環境にある。
  大学の先生に関しても、日本に比較すると抜群にステイタスが高いこともあり、
  大企業への影響力も非常に大きく、起業支援の強みになっているとのこと。
   一方では、大学の先生はあくまでも民間との感覚差はあるのもあたりまえである。
  しかし現在は、韓国でのIMの殆どが大学の先生であり、
  いかに民間人材をIMとして採用活用していくかが大きな課題であるようである。
  大学の先生はプライドが高いことが想定されるが、
  なかなか民間人の受入れに関しては抵抗感があるのではないかと考えられる。
   また韓国の経済市場は小さいこともあり、ビジネス・インキュベーションにおいて、
  海外との連携は当初から必要事項として存在しているように感じられた。
  逆にアメリカは非常に大きな国内市場を持っていることもあり、ビジネス・インキュベーション
  に関しては、海外連携は全く関係ない世界のような話を聞いたこともある。
  日本においても現段階では、やはりアメリカに近い感覚での捉え方ではないかと考えている。

   いずれにしても、先ず熊本県内のビジネス・インキュベーションを
  「点から面へ」持っていくことが大切であると考えている。
  現在は荒尾市からIM養成研修生を出しており、また次年度は熊本市も検討しており、
  今後は八代、水俣などにも、それぞれの地域特性を活かした
  ビジネス・インキュベーション活動が広がっていくことが望まれる。
   次に来るのが九州地域の連携で、現在BIPという起業支援人材の場づくり、
  ネットワークづくりが始まっているところである。
  ビジネス・インキュベータも増加の一途であると共に、IMも急激に増加しつつある。
  九州には今年度中に33名のIM養成研修終了生がいることになり、
  沖縄も含めると43名という大きな集団となる。
  来年度には九州各県にIMもいるようになることもあり「リフレッシュの場」
  「知り合い、教えあい、学びあう場」がうまく育っていくことも望まれるところである。