■最近の行政施策に思う

  脱サラ間もない平成12年度から、私はオフィスチェイカスでの中小企業診断士活動と併行して、県の中小企業支援センターの初代PM(プロジェクトマネージャー)を4年、全国初のリージョンIM(インキュベーションマネージャー)を2年、そして国の新連携事業の初代PMを4年経験してきた。その間には、国の創業支援策である日本立地センターのJANBO(現在は民間機関JBIAに移管)のIMインストラクターを制度発足時点から14年間務めており、今も継続している。IM認定制度が始まって11年目を迎えているが、初代SeniorIMの特別認定3人の中の1人でもある。
これらの活動を通して、時代の大きな変化に対して、行政の起業・企業支援制度が変化に対応できずにあること、即ち新たなチャレンジが難しい状況にあることを、常に感じてやってきたように思う。

  行政の各種助成制度は、税金を先行投資して実現しているわけであり、極力、税金の有効活用が望まれる。特に国の借金が1000兆円を超える状況になっているにもかかわらず、この3年の税金投資のかけ方を見ると、単なる大盤振る舞いではすまない状況にあり、いろいろ危惧しているところがある。 
行政の方々も、どうやってこの多額なカネを使うかに腐心しながら、景気回復?の新施策の検討を打ち出しているのではないかと思う。そして結局、新しいことをやる場合でも、過去のスキームの焼き直しをすることになっているように見受けられ、今からの変化の激しい時代には、そぐわないケースが多くなっているのではないかと危惧している。

 例えば、
民間企業で新規事業を始めるにあたっては、@調査・企画(PLAN)、A試行(DO)、B結果の確認(CHECK)、C改善施策(ACTION)を何回も繰り返し行い、うまくいくようになって初めて、D部分(国、地域、店舗)的に本格実施でPDCAを回し、E全面展開というプロセスをとる。(一部は平行展開するケースもアリ)
ところが行政が行う場合は、せいぜい
@調査・企画(PLAN)、A過去の蓄積スキームを活用し「形だけのモデル事業(やることが目的)」の実施、B全面展開のプロセスであり、民間的発想からすると、「高度成長期の過去の成功体験をベースに、机上の計画を立て、実行するだけでは、うまくいく確率は非常に低い。」と思うようなやり方になっているのではないか。

本来であれば、「先行投資予算を組んで、民間企業が実施するやり方を踏襲し、新規事業の成功確率を高めて準備しておき、新予算が準備された時に施策実行する。」というようなやり方が必要であると思う。新たな時代への対応について、自分たちで新たな企画ができる感覚があるのかもしれないが、繰り返し改善を行なってブラッシュアップしない限りは、机上の空論である可能性が高い。
私は、民間企業と同様に、行政施策の事業開発に対する予算を組み、今から必要と想定される事業開発を事前に準備できる体制づくりや意識改革を図ることが、税金の有効活用に必要ではないかと思っている。

 日経ビジネス2015.06.29号に、「最近、何故改善成果が上がらないか?」のテーマが取り上げられている。どうも最近は、企業においても改善成果が上がらないケースが増えてきているので、カイゼンが取り上げられたと思うが、そのポイントを整理して記載しておく。
ポイント@:上からの押し付けでなく現場が主役
現場の工夫を盛り込みながら、人材能力をより引き出し、働きやすくすること。他社と設備や人材が同レベルでも、より高い成果を上げ、利益にも結びつく。
しかし、初めから完全な改善などあり得ない。次々に生まれる問題を解決し、改善を繰り返さなければ効果につながらない。
ポイントA:改善の目的を明確に持つこと
改善の目的は働き方をよくすることが主で、結果として生産性が向上すること(お客様お役立ちの結果が利益:松下幸之助)
コスト削減にとらわれ過ぎると本末転倒になる。
ポイントB昔の成功モデルを捨てること
年配者は昔の成功に固執しがちであるが、技術や時代は変化しているので、改善方策も変わるのが当たり前である。

 今からは「ないものを創る」能力が、企業にも行政にも、非常に重要になっていくと思っている。