■会社法の施行について |
5月1日施行の会社法では、経済社会の近年の変化に目配りしつつ、会社に関する基本法を整えたとされる。その内容は幅広いが、会社運営の自由度を高めたのが大きな特徴である。会社の規模別では大多数を占める中小企業を含め、法律をよく知ってうまく活用するかどうかで、企業の競争力や将来に向けた競争力にも差が出てくる。 新会社法に関する書籍は、山ほど出版されているが、そのポイントについて日経新聞に掲載されていたので、抜粋して以下に紹介しておくこととする。 |
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従来の商法での取決めに比べ、会社法では先ず企業設立時のハードルがかなり低くなった。最低資本金制度が撤廃され、資金が少なくても会社を起こせるようになった。取締役や監査役設置に関するルールも柔軟になり、既存の企業もこれまで以上に機動的な経営が可能となる。会社設立の際の条件等について、従来(旧商法)と今後(会社法)の比較一覧を以下に示しておく。 |
今後(会社法) | 従来(旧商法) | |
設立できる会社 | ・株式会社 ・合同会社(新設) ・合名会社 ※有限会社は廃止 |
・株式会社 ・有限会社 ・合名会社 ・合資会社 |
最低資本金額 | ・制限なし(資本金0も可) ・現物出資も容易に |
・株式会社:1000万円 ・有限会社: 300万円 ※特例制度の例外あり |
取締役の人数 | ・1人以上 (最も簡便な組織の場合) |
・株式会社:3人以上 ・有限会社:1人以上 |
取締役会の設置 | ・任意(最も簡便な組織の場合) ・書面、ネット決議も可能 ・無過失責任のものも過失責任に |
・強 制 |
監査役の設置 | ・任意(最も簡便な組織の場合) ・会計監査役も株主代表訴訟の対象 ・会計参与の導入 (中小企業の企業統治強化) |
・強 制 |
企業の資金調達 | ・社債発行の機動性向上 ・社債の銘柄統合が容易に ・権利内容に異なる種類株の多様化 |
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情報開示 | ・買収防衛策を株主総会で説明 ・内部統制システムを取締役会が整備 ・社外取締役や社外監査役の活動 ・M&Aの対価内容や算定根拠を説明 |
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特に中小企業に適用されるポイントについて、少し詳しく解説を加えておくこととする。 |
<会社を設立する際のルールはどう変わったか> 創業段階で資金がなくても簡単に株式会社を設立できるようになる。原則として株式会社は1千万円、有限会社は300万円の資本金を準備しなければならないという商法にあった最低資本金の規定が撤廃された。会社を起こしたい人は10万円でも千円でも、実際に必要だと判断して額を出資すればいい。実際にどの程度具体例が出てくるか分からないが、ルール上は資本金ゼロでも会社設立ができる。 |
<従来あった「1円企業制度」は> 2003年施行の新事業創出促進法により、時限的な措置として「1円起業制度」があった。同制度に基づき当初の資本金額が最低資本金に満たない会社が、現在までに3万5千社生まれた。ただこれらは、設立5年以内に所定の資本金以上に増資しなければ、解散しなければならなかった。今回の会社法による最低資本金の撤廃で、1円起業制度の下に定められた解散ルールの意味がなくなった。所定の規模まで資本金を増やしていない会社でも、取締役会決議か過半数の取締役の決定により、いつでも定款の解散規定を削除して、そのまま継続できるようになった。 |
<新たにできた「合同会社」とは> 日本型LLCと呼ばれる。出資比率に応じて配当など剰余金を分配する株式会社と違い、アイデアや技術面の貢献度合などによって出資者への配分を決められる。いろいろな特技を持った仲間で起業する技術勝負のベンチャーなどに向いた形態だ。合同会社はいつでも株式会社に移行できるので、小さくスタートして、将来は大きく発展させることできる。 |