■時代を読むB 「SINIC理論」現在から未来
  「SINIC理論」の中で、現代は最適化社会に位置づけられている。
 ではいったい、最適化社会とはどんな社会なのか、そこではどのような
 価値観が大切にされるのか、詳しく見ていこう。

  物質的豊かさから、心の豊かさや新しい生き方を求めるといった精神的な
 価値観が重視され、新しい精神文明に基づく生き方を行動に移していく、そ
 んな動きが顕著になるのが最適化社会である。 

   効率・生産性を追求するという工業社会の価値観が相対的に低下してくる一方で、人間として生きている
 喜び、生の歓喜の追求という価値観が相対的に大きくなってくる。その2つの価値観と、それに基づくいろい
 ろな社会システムやパラダイムの葛藤や軋みが顕在化し、新たな社会システムやパラダイムへと消化され
 ていくプロセスが、最適化社会の20年間であるといえる。

  そして、社会のあらゆる現象をシステムとして捉えながら、社会的な仕組みが、点から線、線から面へと
 最適化され、あるいはグローバルな仕組みがどんどん作り出されて、それによって自分自身の生き方、豊
 かな人生、自己実現などの人間的欲求が実現されていき、やがて来るべき自律社会へと移行していくと
 考えられる。
 工業社会は、物質文明を繁栄させた一方で、エネルギー問題
や産業廃棄物問題、食料、人権、倫理などたくさんの負の遺産
も残した。しかし、最適化社会では、それらの問題を克服し、心
の豊かさを求めるソフトやサービスが主要産業として位置づけら
れるのも、大きな特徴である。

 最適化社会は、人間と機械が理想的に調和した社会であり、
生産性や効率の追求に代わって、人間としての新しい生き方
や自己実現が相対的に重要になる。そのとき人間は、より本質
的な欲求、例えば、健康で幸せに長生きしたい、快適な生活を
送りたい、生涯学習を受けたい、楽しい余暇を過ごしたい、と
いったことを重要視するようになると予測している。
  今から40年前にあたる1970年の段階で、こんな壮大な原始社会から始まる未来論・文明
 論を提言したオムロン創業者・立石一真氏は、私達には想定ができないほどの、偉大な未来
 学者だったのではないだろうか。
 そのような偉人を生んだ熊本には、創業の原点商品であるリレー関連のコア企業・オムロン
 リレーアンドデバイス株式会社も設置されており、もっと声を大にして立石一真氏を誇って
 いいのではないかと思った次第である。