■時代を読む@ 未来を描く「SINIC理論」
  現在進行中のソーシャルメディア変革の位置付けが、産業革命に匹敵するような
 社会に大きな変化をもたらすものではないかと思っている。しかし情報モラル教育も
 されていない中で、ビジネスマインドでのインフラ革新が急激に進んでおり、SNS、ス
 マートフォンなどの普及によって、よく理解していない人でも簡単に使える環境になっ
 てきており、今から多くの分野でソーシャルメディア革新の「光と影」が顕在化していくと
 思われる。日本人は性善説に基づく社会風土にあり、「オレオレ詐欺」に象徴される
 ように簡単に騙されやすい基本素地を有しており、うまくルール設定がされないままで
 推移していくと、とんでもないことが起こるのではないかと危惧する面も感じている。
 それからビジネスへの活用の際には、どうしても金銭至上主義ベースにした囲い込み
 の一人勝ちのためのツールにしたり、競合他社へのネガティブ活用になりがちである。
 本当は「地域コミュニティーの崩壊」が言われている中で、「新たな地域コミュニティー
 構築のツール=新たな情報インフラ」として活用していくことが必要ではないかと思っ
 ている。
  光の部分の今後の方向と、影の部分の今後の可能性の話なども含めて、自分なりに
 今からの時代について、把握していきたいと思っている。


  早速、本論に入っていくが、熊本出身の時代を読む努力をした大御所に、オムロン創業
 者・立石一真氏がいるが、1960年代後半から、社会と科学と技術のあり方と未来に目を
 向けてきた。日本が先進国の仲間入りをし、企業としてソーシャルニーズを創造し続ける
 ためには、技術の上に先を見通す力が必要だとの強い信念から、1967年に研究グループ
 を結成。その成果を1970年の国際未来学会で、未来予測理論「SINIC理論」として発表し、
 社会的に大きな反響を呼んだとのこと。社会の歴史的発展を11段階に分けた中で、現在の
 日本は「最適化社会」にあたり、精神的豊かさや新しい生き方への社会ニーズが増大する
 段階と位置づけられている。
  SINICとは“Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution”の頭文字をとったもので、「SINIC理論」
 では科学と技術と社会の間には円環論的な関係があり、異なる2つの方向から相互にインパクトを与えあっ
 ているとしている。ひとつの方向は、新しい科学が新しい技術を生み、それが社会へのインパクトとなって
 社会の変貌を促すというもの。もうひとつの方向は、逆に社会のニーズが新しい技術の開発を促し、それが
 新しい科学への期待となるというもの。この2つの方向が相関関係により、お互いが原因となり結果となって
 社会が発展していくという理論である。
   私がサラリーマン時代の大口取引先の一つにオムロンがあり、オムロン創業者が熊本出身であることに
 加えて、当社の企業風土に共感していたが、オムロン創業50周年の時にいただいた記念冊子の中に、こ
 の「SINIC理論」がA3版二つ折りで添付されており、非常に興味を持ち何回も読んでは感動していた記憶が
 ある。現在、私が主宰する若手経営者塾である共育塾の中で、40年前につくられた未来予測「SINIC理論」
 を紹介してきた。
  今からの時代を読む上において、先ずはオムロン創業者・立石一真氏の「SINIC理論」を取り上げてみた
 い。IS考を書くにあたり、私が持っている「SINIC理論」のシートと、オムロンのホームページを活用させてい
 ただいた。
                http://www.omron.co.jp/about/corporate/vision/sinic/