■イノベーション考E

   今まで5回にわたり、「イノベーション」に関して、いろんな方々の捉え方を紹介してきたが、
  復習の意味でも「イノベーション考」の整理・綜合化を行うことで、区切りとしたい。
 
  @ シュンペーターが「創造的破壊=新しい結合のやり方(5類型)」と表現したのに対して、
  経済産業省が日本に「創造的破壊=技術革新」と紹介した。5類型を以下に示す。
  1.新しい財貨の生産 (例:日清の「カップラーメン」)
  2.新しい生産方法の導入 (例:トヨタの「JIT生産方式))
  3.新しい販売先の開拓 (例:三越の「現金掛け値なし」)
  4.新しい仕入先の獲得 (例:農業者の「産地直販」)
  5.新しい組織の実現 (例:京セラの「KDDI事業」
 
 A元松下電器副社長の水野氏は、「技術革新」と翻訳して難しいものにしてしまったが、
 本質は「現在あるものの新しい結合(ニューコンビネーション)+断固としてやる覚悟(人)」と
 表現した。「断固としてやる覚悟」がない状況で、単なる発想だけではイノベーションは起きない
 ことを明確に表現したかったのだと思う。水野氏が日本人で製造業出身だからかもしれないが、
 私には非常に分かり易い、シックリとくる表現で述べられている。
  B 『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』の著者カーマイン・ガロ氏は、スティーブ・ジョブズ氏を
  調査・分析する中で、「イノベーションとは、組み合わせる力である。」と結論付けた。「連結力」とでも
  いうか、既にある技術やアイデアを組み合わせて、全く新しい技術や製品・サービスに昇華する力を
  指すのだと考えている。イノベーションとは、必ずしも画期的な発明を指すわけではない。既にある
  技術やアイデアでも、その組み合わせ方次第で、世界を変えるようなイノベーションを起こすことが
  できる。そのためには、「イノベーターが備えている7つの基本的な要件」が必要条件としてある。
  その1:仕事に没頭できる「熱い心」
  その2:何をしたいのか、鮮明なビジョンを持つ 
  その3:創造力とは、つなげる力である 
  その4:製品はあくまでもビジョンを体現する手段 
  その5:大事なのは何を足すかではなく、何を引くか
  その6:モノより思い出を提供する 
  その7:ストーリーを語っているか
  
  C そしてドラッカーは「マーケッティングだけでは企業としての成功はない。イノベーションも
  伴って、初めて成果をもたらす。」と述べており、イノベーションの役割について「新しい満足を
  生み出す」と述べている。マーケッティングしながらイノベーションするとともに、イノベーションの
  視点を取り入れながらマーケッティングしていくことで、何かしらの「新しい満足」を創造して
  いくと述べている。
  
   今回、イノベーション考として6回シリーズで纏めてきたので、「イノベーション」に関して、いろんな
  方々の捉え方を紹介してきたが、最も大切なことは、「イノベーション」とは「技術革新」や「創造的破壊」
  などと難しいことではなく、「幸島の芋洗い猿」の事例に示したように、我々にも非常に身近なもので
  ある
ことを伝えることができたのではないかと考えている。
  「技術革新」と翻訳して難しいものにしてしまったが、本質は「現在あるものの新しい結合(ニューコンビ
  ネーション)+断固としてやる覚悟(人)」
だと改めて思った。