■時代の変化と社会人材教育@

   日本の欧米化が進む中で、日本人そのものが大きく変質しているように感じざるを得ない状況にある。
 自己中心主義が蔓延し、思いやりや責任感、規律性、協調性が軽んじられるようになり、結果的に
 地域コミュニティの崩壊、学校崩壊、家庭崩壊、そして自分崩壊が社会問題化しつつある。
 このような中で、子供の教育の重要性が多方面で論じられるようになり、安部政権の重点施策の一つ
 として教育基本法の大幅改正が衆議院を通過したところである。
   11月中旬に、中小企業診断協会・熊本県支部が主催で中堅社員研修が開催され、
 私も「部下の指導育成とリーダーシップ」のテーマで110分間の講義を行った。
 この講義のレジメを作る過程で、多面的に参考資料を調べていくうちに、時代が大きく変化
 してきていることにより、思っていた以上に社会人材教育のあり方も変わってきていることを
 再認識したので、首記のテーマでコラムに採り上げることにした。
  先ずは時代の変化について述べてみる。
 戦後60年を過ぎたが、社会的な変化として「物不足の時代→高度成長の時代→低成長・
 モノ余りの時代」と推移していく中で、経済的には「国民総貧乏の時代→1億総中流の
 時代→富の2極化の時代」と推移してきている。終戦後、「日本経済復活の奇跡」と
 称されるように、短期間で急速な経済復興を成し遂げ、その後の高度成長期が40年ほど
 続いた後にバブル崩壊を迎えた。高度成長期が長期間続いたために、高度成長期のいろ
 んな考え方が、我々の社会・経済の常識を作ってきたのは事実であり、バブル崩壊後
 15年経った今でも、まだその時代を引きずっているのではないだろうか。
  このような社会・経済環境や生活環境の変化により、精神的には(マズローの欲求
 5段階説欲求で表現すると)「生理的欲求・安全の欲求→社会的欲求・自我の欲求→
 自己実現の欲求」へと推移してきていることになる。高度成長期の恩恵を受けた我々団塊の
 世代はいいものの、次の世代は将来展望の見えにくい閉塞感を感じているのではないか。
 更に若い団塊ジュニアの年代になると、小さい頃から経済的に恵まれた環境で苦労知らず
 に育っており、厳しい経験がないままに、頭の世界だけの自己実現の欲求が膨らみ、
 「青い鳥症候群」を生み出し、フリーター・ニートの急増に繋がっているように感じる。モノの
 豊かさの反面、精神的な面の課題が噴出している状況にある。
   高度成長期に培われたものに、「いい学校に入り、いい会社に入り、定年を迎えて悠々自適
 の年金生活をすごす」という考え方があるが、バブル崩壊とともにこの仕組みは完全崩壊して
 いる。しかし今でも、多くの主婦層が頭の切替えができないままに、今でも子供に高度成長期
 の価値観を押し付けているのではないだろうか。
 これも社会問題の一つになっているように感じられる。「厳しい経営を強いられる企業」と
 「一般社会と遊離した職業観の乏しい若者」の相乗作用により、「正社員比率の低下(パート・
 アルバイトの急増)」「フリーター・ニートの急増」という、歪な社会構造になってきている。
   企業社会において、バブル崩壊後の「終身雇用、年功序列、企業別組合」の崩壊に加えて、「世界競争
 の激化」「少子高齢化の進展」も進んでおり、先の見えにくい社会となっているだけに、発想を転換して、
 生き方に関しても今まさにパラダイムシフトが必要になってきているようである。
 そういう中での社会人材教育のあり方について、考えてみたい。