■有田焼万華鏡

  有田焼は世界ブランドの美術工芸品であり、400年の伝統を誇るものであるが、現在は最盛期の
 3割ほどの売上規模になっている。
 一時は飛ぶ鳥も落とす勢いで成長し、ノウハウを流出させないように縦割り分業化し卸業者が主導権を
 持った販売志向構造で、長年の固定的な仕組みのまま動いてきたために、それが災いして技術革新や
 経営革新が遅れてしまい、いつの間にか衰退産業の代表例になってしまった。
  このような状況下で、数年前から有田焼復興の新たな動きが始まっており、その努力も実り始めて
 いるが、ここに至るまでの経緯を是非とも紹介しておきたい。
  佐賀・有田町にある佐賀ダンボール商会の副社長をしている石川慶蔵氏が仕掛け人である。
 石川氏は佐賀県出身で、長年の間、松下電器産業(PHP研究所勤務が長い)で仕事をしていたが、
 5年前に帰郷して、奥さんの実家である会社の経営をしている。万華鏡のビジネス・アピールに当たっ
 ては、必ず松下幸之助の経営思想を体現したい意向も合わせて話をされるが、石川氏の強い思いが
 聞き手にもひしひしと伝わってくる。
  石川氏は3年前に大病を患い入院した際に、気分転換に活用しようと考えて、1本の台湾製の万華鏡を
 持ち込んでそうである。長期入院している寝たきりの女性の患者に見せたところ、「こんな綺麗なの
 初めて見た」「小さい頃お母さんに作ってもらった」と、言葉少なだった女性は語り始め、曇りがちの表情に
 笑顔が戻ってきたとのこと。厳しい仕事をこなす看護士も、「万華鏡を見せて」と立ち寄り「元気が出た」と
 職場に戻るようになった。人に感動を与え、癒しの効果が大きいことを実感したわけである。万華鏡は
 1816年にイギリスの物理学者デヴィッド・ブリュースターが開発したそうであるが、海外では現在は「アート
 としての万華鏡」として見直されていることも知った。
  何とか有田焼を昔のように元気に復活させたい気持ちで、いろいろ考えていたこともあり、そのときに
 「400年の伝統のある有田焼で万華鏡をつくり、多くの人に夢と感動を与える」というアイデアがひらめき、
 退院後に早速石川氏の万華鏡づくりに共感するメンバーを集め回り、世界初の焼物製万華鏡「有田焼
 万華鏡」の開発を始めたそうである。
  商品化までは、陶器の寸法精度や円心度など、多くの問題が発生したが、それらを一つ一つクリアする
 ことで、商品化までこぎつけた。特に万華鏡デザインに関しては、世界的な万華鏡作家である山見浩司氏も
 仲間に入ってもらい、世界に評価してもらえる商品に仕上げることができたそうである。
  今では小型・卓上・大型万華鏡70種類の品揃えとなり、年間3500本(金額で約1億3千万円)を売り
 上げるまでになっている。
 万華鏡商品は1万円から8万円台の商品がメインであるが、大型万華鏡では350万円するものもある。
  
  ↓ (写真:佐賀ダンボール紹介のHPより)↓
               
  
  現在は万華鏡と同様に、世界市場をターゲットにした有田焼の技術を生かした新商品の開発も、
 いくつか始まっており、一流企業と組んで進めているとのことであった。
 伝統的な地域資源を活用した新たな産業起こしが始まりかけていることを実感し、新たな地域おこしに
 感動するとともに心から応援していきたいと考えた次第である。
 最後に、佐賀ダンボール商会【有田万華鏡】のURLを紹介しておくので、見ていただければ幸いである。
                       http://www.arita-mangekyo.jp/